一般社団法人 ステップボーンカット協会の代表理事を務める牛尾早百合さんが開発した「ステップボーンカット」は、今までにない革新的なカット技法として国内外のスタイリストから注目を集め、世界中に広がっています。また、カットした髪型がさらに綺麗になる商品も販売し、多くの方が愛用しています。業界が注目するステップボーンカット誕生の背景や特徴について、牛尾早百合さんと活動講師の神谷幸代さんにお話を伺いました。
一般社団法人 ステップボーンカット協会 代表理事 牛尾早百合さん
━━まずは「ステップボーンカット」が、どのような技術なのか教えてください。
牛尾 骨格を補正してお顔を綺麗な卵型に、そして立体的な小顔に見せるヘアカット技法です。20年ほど前から作ってきた形で、特許も取得しています。いわば「小顔補正立方体カット」ですね。
神谷 今までは髪の毛でヘアスタイルを作っていましたが、ステップボーンカットは骨格を髪の毛で作るんです。骨格を綺麗に見せることで、顔が小さく、首が長く見えて、全体のバランスが良くなるんです。
Skオリジナル代表で、ステップボーンカット活動講師 神谷幸代さん
━━どのような経緯で開発された技術なのですか?
牛尾 私自身、頭の形や髪質にコンプレックを抱いていました。アニメのようなスウィングするヘアスタイルにしたかったのですが、どうしても出来なかったんです。そこで、自分でカットした方が綺麗になると思って美容師になりました。しかし実際は、自分でカットすることが出来ず、結局は誰かにカットしてもらわなければいけない状態でした。そんな中、理想のヘアスタイルのイメージを絵に描きながら、その質感がどうすれば実現できるのか試していったんです。その結果、出来上がったのがステップボーンカットです。
━━もともとはご自身の悩みからスタートしてるんですね。
牛尾 そういうことですね。私に限らず、多くの方が持つ悩みだと思います。しかも、日本人だけでなく、外国人の方でも当てはまるものなので、世界中の人に対応できる技術なんです。
━━現在では、世界中のスタイリストが技術を習得していますよね。
牛尾 最初は自分のところを守ることで精いっぱいだったため、広めようとは思っていませんでした。スタッフだけに教えていれば良いのではないかと。ですから、取材を受ける際にも、仕上がったスタイルは見せましたが、その過程は公開しませんでした。
━━技術を広めようと考えが変わったのはなぜですか?
牛尾 日本の美容師は給与が安く、遅くまでトレーニングしても報われないと感じていました。一方で、海外は美容と言えばエステに近い贅沢産業のような面があり、割と給与が高めなんです。そんな中、この技術が日本の美容や美容師の価値を上げ、状況を打開する助けになるのかもしれないと思い、広めていくことにしました。
━━ステップボーンカットの技術を広めるため、具体的に取り組んだことを教えてください。
5月に東京で開催された「ステップボーンカット2019サミット」
牛尾 最初は2~3時間の体感セミナーのようなものを開催しました。そこから基礎コースという形で認定を行い、しっかりと実技も含めた3日間のセミナーにすると、一気に広まったんです。当然ながら、当初ステップボーンカットという名前すら皆さん知りませんでした。ですが1年間セミナーを行い続けると、毎回参加してくれる方が増えてきたんです。あとは、やはり口コミですね。現在は、日本はもちろん、アメリカ、中国、シンガポール、台湾など、世界各国にステップボーンカットの技術を取得したスタイリストがいます。この技術が、今後ベーシックになればと思っています。
━━認定を受けた後も、定期的に技術を学ぶ場はあるのですか?
牛尾 コースが基礎、テクニック、マスターとあって、段々と高度になっていきます。フォローについてはこれまで本部が動いていましたが、人数が増えると難しいため、現在はエリア毎にフォローしている状態です。海外でもニューヨークにはスタジオがあるので、そこで募集したり教えたりしています。
「ステップボーンカット2019サミット」に参加された皆さん
━━実際にステップボーンカットを体験されたお客様は、どのような反応をされますか?
牛尾 皆さん、とても喜んでくださいます。それはもう髪のぜい肉が落ちるような初めての感覚ですよね。本当は皆さん可愛いのに髪の毛で損しているんですよ。自分に合う髪型を、自分で見つけるのは難しいかもしれません。でも、自分で嫌だと感じている部分はありますよね。それを伝えてもらえれば、この技術を持っている美容師は美人・美男の顔に見えるようヘアカットしていきます。
神谷 それも難しいことではなく、ある程度はカリキュラムができているんですよ。ですから具体的な説明がなくても、その人に合った髪型を作ることができます。
━━マニュアルのようなものがあるんですか?
神谷 美容師は感覚的な教え方しかできない方が多かったんですが、ステップボーンカットは体系化され、例えば何㎝切るなど細かくマニュアルのようなものもできています。とてもシステマチックなので、教えるエネルギーはこれだけで半分以下になりました。
━━何㎝切るかまで細かくマニュアル化されているから、全員が同じ技術を提供できるんですね。
神谷 そうなんですよ。極端なことを言えば、技術を開発した早百合さん本人ではなく、他の人が教えても同じように技術が習得できます。これは、美容業界になかった画期的なシステムですね。
━━シャンプーなど商品も開発されていますが、どのようなコンセプトで作られているのですか?
牛尾 もともと商品を作るという感覚ではなく、ステップボーンカットの髪の毛が最高にスウィングするもの、ブローしないことがコンセプト。乾かさなくても髪の毛がさらさらで、そのまま形になるための商品を作っていました。カットローションにして地肌から染み込むと顔が小さくなり、髪の毛にも染み込んでツヤツヤになるといったような商品です。使うだけでカット中もエステ効果があるんですよ。また、トリートメント効果もあり、シザーも力を入れず綺麗に切れるんです。
━━商品開発のうえで、苦労されたことはありましたか?
牛尾 エステの商品に関しては詳しい方でしたが、商品を作るということ自体にあまり知見がなかったので、工場とのやり取りも苦労しましたね。また、開発に当たっては、かなりテイスティングを行いました。スタッフはもちろん、お客様にもテイスティングしたんです。その結果と共に、商品を使った日だけでなく、その後数日は綺麗な状態の保てる商品を作っていく。もともとの髪質が綺麗になるなど、本質の商品にこだわっています。もちろん、お医者さんの協力のもとエビデンスも取っています。
━━商品は、ECサイトとサロンでの販売ですよね。
牛尾 そうですね。ただ現状はECよりサロンで購入される方が多いですね。カット後に使うと仕上がりがとてもよくなるので、オイルなどセットで買って帰られます。
兵庫県神戸市にあるサロン「TICK-TOCK Tor-west」
━━世界中にスタイリストがいますが、海外のサロンでも販売されているんですか?
牛尾 ニューヨークでは販売していますが、他の地域では輸出状態を作っていません。本当は各国で販売したいのですが、そこまで数が多くないこともありますし、輸出は難しいので。
神谷 ただ海外でも販売したいという声は多く、今もっとも大きな問題だと思っています。
牛尾 ただし、あくまで商品ではなく技術ありきです。ステップボーンカットは、皆さんの悩みを解決できるので、今後も技術を広め、それを活かす商品を開発していきます。
一般社団法人 ステップボーンカット協会兵庫県神戸市中央区播磨町49-507TEL:078-333-6765URL:http://lfca-japan.com/
撮影:中野昭次
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