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インタビュー「solco」

塩の良さと作り手の想いやストーリーを“伝える”店作り

人間の生命を維持し、生活するうえで欠かせない“塩”。何気なく使っている人がほとんどですが、世界には多様な個性を持つさまざまな塩が作り出されています。それぞれの塩が持つストーリーを伝えながら販売する塩専門店「solco」代表の田中園子さんに塩への熱い想いを伺いました。

石巻の土産物屋で出会った一つの塩がビジネスへ

━━食のビジネスに関わるきっかけを教えて下さい。

田中 もともと食べることも作ることも好きでしたから、漠然と食のビジネスをしたいとは思っていました。でも大学院でバイオサイエンスを専攻していたことから、就職は希望の食品開発ではなく製薬会社の開発職に。仕事をしながら、フードコーディネーターの学校に通って食の見聞を広めていました。
30歳を過ぎた頃に、野菜ソムリエの会社のマネージャーとして転職したんです。そこで働いたのは1年間だけでしたが、マネージメントやイベント企画、食の安全などを学ぶことができました。農家さんなど作り手のことを気に掛ける発端にもなったのだと思います。その後、いろいろな業界で経験を積み、資金を貯めて食に関する起業の準備を始めましたが、まだ核となるコンテンツを見つけていない状態でした。

━━塩専門店をオープンすることになったきっかけは何ですか?

田中 2013年7月に石巻に旅行に行ったんです。東日本大震災のときに被災地のために何かしたかったんですけど、中途半端にかかわるのは嫌でしたし、寄付するなら直接渡したいと思って何もできませんでした。ただ、ずっと何かしたいと思っていたんです。そんなとき、友達から石巻で美味しいお寿司を食べてきたから、一度行って来たらと手紙をもらったんてす。それで被災地に行ってお土産をたくさん買ってこようと思って旅行に行ったときに、ふと入った土産物屋で「伊達の旨塩」という塩に出会いました。現在、008番として販売しているものです。この出会いが全ての始まりでした。

solco立ち上げのきっかけとなった宮城県石巻で出会った008「伊達の旨塩」

━━他の塩と何が違ったんですか?

田中 味見をさせてもらうと、しょっぱいだけだと思っていた塩に旨味があるのに驚きました。オープンしてから生産者の方に会いに行ってみると、牡蠣を養殖している湾の海水から作っているんです。牡蠣の呼吸したエキスが入っているから美味しいのかなと。
もちろん即購入。もともと調味料が好きだったので塩もいくつか持っていて、確認してみると20種類ほどありました。改めて見ると色も形も香りもすべて違って個性があるなと思ったんです。私は理系出身なので、マグネシウムとナトリウムなどミネラルの量を全部表にして仮説、検証を繰り返しました。でも思った通りにならなくて、もっと塩について深く勉強をしたくなり、ソルトコーディネーターの資格を取得しました。

━━そのときには塩を商材に起業しようと考えていたんですか?

田中 勉強をしているときはビジネスにすることは考えていませんでした。資格を取得してしばらくしてから塩でやりたいことを考えました。料理教室やワークショップの形態も考えたのですが、“塩を売る店”をイメージしてみたらメニューからレイアウトまで30分くらいで一気に書き上げられたんです。何かが降りてきたみたいでしたね。それで、物件が決まればすぐやろうと決断しました。

バックグラウンドにある塩のストーリーを説明カードに

━━お店のコンセプトを教えて下さい。

田中 塩の味とともに、作っている方の想いを伝えることです。どんな人が、どんな想いで、どんなところで作っているかというような、バックグラウンドにある塩のストーリーが大事だと思っているので、塩ごとにストーリーを書いたカードを用意しています。事前にホームページで読んでくれているお客様もいるのがとても嬉しいですね。
現在は国内外の塩を約40種類ほど販売していますが、一般の人に敷居を低く、楽しんで買っていただけるように、色や香りが個性的なものや珍しい塩なども揃えました。ときどき入れ替えたり、solco限定の塩を置いています。

一つひとつの塩のストーリーをカードに書いて説明

━━これだけ種類があるとお客様も迷われるのでは?

田中 一人ひとり味覚も好みも違うので、ぜひ味見をして買っていただきたいです。ですから、店の売れ筋とか、お勧めなどの表示はしていません。プレゼントをされる場合も、相手の好みを考えながらご自分で選んでいただきたいと思っています。
塩だけの味見もできるのですが、デリのおむすびやジェラートで試していただくのがお勧めです。塩だけ舐めたら苦い塩が、食材にかけると甘くなったり、旨みを感じたりすることがあるんです。実際、試食した上で気に入ったものを2~3本チョイスして買っていかれる方もいますね。
実は数種類の塩をメニューや食材によって使い分けて欲しかったので、容器はキッチンに置いても邪魔にならないスリムな形にこだわりました。また、色や結晶の形など、塩の個性を際立たせるために、同じ容器に揃えて小分けにして販売しようと考えました。それで容器屋さんに、「試験管みたいな容器が良い」と相談したら本物の試験管が偶然用意されてきたんですよ。「これだー」って思いました。

立地を活かしたメディア戦略でオープン前にPR

━━オープン時にはどのようなPRをされたのですか?

田中 戸越銀座商店街は頻繁にロケが来るので有名ですよね。私はお店を出すより先にここに住んでいた生活者だったのでインタビューを受けたこともありました。だから、お店を開けば絶対にメディアに紹介してもらえると確信していたので、広告費はいらないと。実際、商店街の理事長がバックアップしてくださって、メディアに話してくれたので、オープン前に取材が入りました。オープンの日がちょうど放送日だったんですよ。

━━戸越銀座商店街にあるのもPRの一つなんですね。

田中 そうですね。商店街の人に支えていただいています。地元の方のリピーターも多いですし 、観光客も来ますが、皆さんインスタとかSNSにアップしてくれて、また新しいお客様が来ます。そうやって皆さんがPRしてくださっています。

━━BtoCだけでなくBtoBでも販売していますよね。

田中 高級なレストランやホテルのほかに、近場のパン屋さんや小さな料理屋さんなどにも購入していただいています。一人のホテルのシェフが他の場所や仲間の料理人に広めて下さることもありました。やはりプロの料理人は塩の使い方が上手いですね。品揃えが豊富なことがBtoBでもメリットになっているのだと思います。
私は販売する塩の他に400種類を超える塩を持っています。県ごとにストックしてあるので、相談に来た料理人から「鹿児島県の地鶏で焼鳥をする」と聞けば、鹿児島県の塩を全部出してあげますし、うちで扱わないものは、どこで買えるのかを教えます。塩を伝えることが私の役目ですから、味見をして知っていただけるだけで嬉しいんです。

塩の個性を引き立たせるデザインにこだわった店内では約40種類の塩を販売

塩のストーリーを伝えられる人材育成と国際的な活動を視野に

━━今後のビジネス展開について教えてください。

田中 店舗展開に関しては、海外を含めいろいろなお話を頂いているのですが、やはり戸越銀座に来ていただいたお客様に直接塩の説明をしたいので、今は他への出店は考えていません。ただ、外に出て単発のイベントなどは企画したいとは考えているので、まずは私がいなくても店を任せられる人材を育てたいと思っています。
また、国際的な活動をしたいと考えていますが、その時に軸になるものが塩なのかは、まだ分かりません。一つのことだけに固執するつもりはないんです。誰か任せられる人がいたら次のことをやる。そういうスタイルでいます。

solco代表
田中 園子(たなか そのこ)さん

solco
〒142-0042
東京都品川区豊町1-3-13 1階
TEL:03-6426-8101
URL:https://www.solco.co/

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