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ピラティスと医療を連携させ、新たな可能性を追求!

Body Making Studio Aulii代表 辻茜先生(右)

ファヴールマルシェ 松田野須子(左)

ピラティスと医療を連携させて、一人でも多くの患者さんを元気にしたい━━。
そんな熱い想いを持って活動を続けている辻茜先生。
乳がん患者さんの術後ケアを目的としたピラティスプログラムの作成や、虎の門病院乳腺・内分泌外科の田村宜子医師と連携し、トレーナーが乳がんや治療法について学ぶ機会を設けるなど、ピラティスと医療の新たな可能性を広げるために活動されています。
そんな辻先生にファヴールマルシェの松田野須子がお話を伺いました。

リハビリのために考案されたピラティス

松田 ピラティスは美容やダイエットというイメージがありますが、もともとはリハビリのために作られたとお聞きしました。

 そのとおりです。ドイツ人のジョセフ・ピラティス氏が、第一次世界大戦の時代に負傷した兵士のためのリハビリとして考案したプログラムが原点です。

松田 辻先生は乳がん患者の術後ケアのためにピラティスプログラムを作成するなど、さまざまな形で医療と連携されていますが、もともと医療との繋がりが深かったんですね。

 ピラティスのメソッドとしては、ジョセフ氏が作ったクラシカルピラティスという基本の動きがあります。ただ、愛弟子にはダンサーや医療関係者などがいて、それぞれの専門性を活かした独自のメソッドを展開していったので、医療に強いメソッド、運動に強いメソッドなどいろいろな流派があるんです。

アメリカでは、病院と連携しているスタジオがあります。私がインターンをしていたカリフォルニアのスタジオでは、高齢者の方が病院からマイクロバスで来て、「骨粗しょう症で身長が4㎝も縮んじゃったわよ」って笑いながら、バンバン身体を動かしていました。

機械を使って辻先生に実演していただきました。

松田 私もロサンゼルスに留学していましたが、アメリカのご年配の方は本当に元気ですよね。アメリカは日本と違って医療費が高いから自分で何とかして治そうという思いが強いのかもしれませんね。

 13年前に留学を終えて日本へ帰ってきたときは、日米でのピラティスへ対する意識の違いから、高齢者の方が自らピラティスのスタジオに来るのは無理だと思いましたが、今では高齢者の方や術後のリハビリを目的として通う方も増えてきています。

今、週2回通っているご年配の方は、怪我のリハビリとしていらっしゃったので、最初は杖無しでは歩けませんでしたが、現在はヒールでスタジオにいらっしゃいますからね。一人で立てるようになりたいと思ったところから始めて、それが叶うと今度はヒールを履きたいと…。健康になると今度は美の方に意識がいくんですよ。

松田 最初は健康寿命を延ばすためにスタジオに来たのに、いつのまにか美容寿命を伸ばしたいと思うようになるんですね。人って欲が出てくるんですよね、特に女性は(笑)。痛みがあると不安からマイナス思考になってしまうので、美容のことまで意識がいかないんでしょうね。

 やはり心身ともに元気じゃないと。病気が原因で鬱になってしまう人もいますからね。アメリカでは、身体を適度に動かすと鬱状態の回避ができるというエビデンスが出ています。メンタルが落ちている人に運動療法はとても効果的です。

松田 心のケアを求めてピラティスに来られる方には、どのように対応されているのですか。

 頭を沢山使ってもらいます。ピラティスはロジカルなフィットネスなので、右脳を使うトレーニングでもあるんです。「今これはこういう動きをしているから、ここの部分を意識して…」というように、表に出ていない筋肉や関節を意識し、一生懸命考えながら取り組んでもらって、右脳を使ってもらいます。これもエビデンスが出ているんですけど、日常生活で右脳を使うことがあまりないので、右脳を使うと達成感が芽生えて、自律神経のコントロールにも繋がり、気分もリフレッシュされるんです。

松田 そうなんですね。ピラティスでフィジカルとメンタルの両面で健康になって、健康寿命から美容寿命に…というように次の目標ができるのは良いことですね。でも、これだけ医療と関係があるのに、日本でのピラティスはマットを用いたものが多く、イメージ的にも美容やダイエットの印象が強いのはなぜですか?

初心者はこんな高度なことはしませんのでご安心を。

 一つは場所と機械の問題だと思います。私が学んだアメリカのスタジオでは一人につき3台使って、それを10セットぐらいおいて、それぞれにマンツーマンで同時にレッスンが行われるんです。私のスタジオで使っている機械は、置く場所がないので2台の機械を一つにしたものなんです。都心では機械を置いているところも増えていると思いますが、機械を置かずにマットピラティスのみを行っているところもあります。

また、機会を使ったメソッドを教えられるトレーナーがアメリカに比べて少ないことも要因の一つかもしれません。ピラティスのトレーナーになるのはとても大変で、最低限の基本的なメソッドがあって、そこからマットピラティスのⅠ・Ⅱ、ベーシック、アドバンスといった資格の取得、そこからさらに機械についても個々に学ぶ必要があります。金銭的にも時間的にもトレーナーになるには大変ですし、集中して学べる場も少ないので、機械を使ったメソッドまで教えられるトレーナーの数が少ないんですよ。

医療従事者×トレーナー×患者さん、三者の連携

松田 辻先生のお話を聞くと、医療と連携してリハビリなどに取り入れていくには、きちんとピラティスを学んで、機械を用いたピラティスが出来ないと難しいですよね。

 もちろんマシンを使うことで効果的なワークを行うことができますが、何も使わずにご自宅でもできるワークも沢山あります。ただ、こういう風に医学と連携してリハビリに…、というと理学療法士さんや運動療法士さんといった医療従事者の方たちの働きと重なるのでは? と誤解をされるかもしれませんが、私が言っている医療との連携とは、医療従事者の方の患者さんを取るわけではないんです。
医療従事者の方たちは、国の規定の中で教えていらっしゃいますし、患者さんにとっては絶対に必要な存在です。術後すぐの患者さんに対しては私たちも、どのようにアプローチしていいのかという不安があります。

私たちの仕事は、医療従事者の方達が治してくださった患者さんをさらに元気にすることだと思っています。
退院した患者さんたちを私たちが受け入れて、その患者さんがどういう症例を持っていて、どういう治療をしたかというところをお医者さんと連携して、患者さんが元の生活に戻れるように生活レベルを上げるところをやっていきます。

松田 医療従事者、トレーナー、患者さんという三角形を作ることで、患者さんを元気にしたいという思いなんですね。

 そのためには、トレーナーも医療について学ぶ必要があります。例えば、私が取り組んでいる乳がんのことでいうと、虎の門病院の田村宜子先生と連携してトレーナーを対象にした講座を行っています。

実はメディカル系のピラティスの講座はたくさんあるんですよ。ただし、それらは、「こういう動きでこういうワークをすると効果的」といった、エクササイズについてのものが中心なんです。医療従事者から手術方法や治療方法、どんな薬を飲んでいるか、どんなことが起こるかなどを直接聞ける機会は本当に少ないんです。

そこでトレーナーと医療従事者とで一緒に講座を作っていくことができれば、その場で質疑応答ができて必要な知識を得られます。そのうえで、医療従事者、トレーナー、患者さんの三者が連携していくことで、それぞれの立場からいろいろ気づいてあげられることも出てくると思うんです。

今までは患者さんが痛いと言ったら、トレーナーは怖くて何もできないことが多かったのです。でも、医療と連携することで、運動しても問題ない、それはリハビリで改善していけるので、痛いけど少し頑張ってトレーニングしましょうって言ってあげられることが多くなったのです。

弊社の松田も実際に体験しました。顔は笑っていますが少し辛そうです。

松田 辻先生も医療従事者も、患者さんを良くしたいというベクトルは同じですから、辻先生の考えに共感してくれるお医者さんはたくさんいると思いますよ。

 私はグイグイ行くタイプなので、今後もっと広げていきますよ(笑)。田村先生のときもグイグイ行ったんですけど、私、患者さんの検診にも付き合うんですよ。あるとき、患者様の了承を得て乳がんの患者さんの検診についていったら、患者さんが田村先生に神経痛みたいなピリピリ感が辛いって相談をされていたんですね。

痛みが辛いなら神経剤を飲もうかって話になったんですけど、そこでまた私がグイグイ入っていって(笑)、患者さんにピリピリするのってソファで横になってダラダラしているときや仕事中とかじゃないのって聞いたんですよ。そうやって話をしていくうちに、猫背になって胸を閉じているときに痛みが出るのではないかと考えたんです。

猫背になって胸の筋肉が固くなると、胸の筋肉が縮むんですよ。それによって神経痛が起きているのであれば、絶対に大胸筋の柔軟性を上げることや強化するワークが必要なので、田村先生に確認したうえで、大胸筋を強くするワークを増やしたんです。そうしたら、3カ月後の検診では痛みがなくなって薬を飲まなくてもよくなったんですよ。

松田 素晴らしいですね。薬は少なからず副作用もありますし、飲まない方がいいですからね。でも、それも辻先生が田村先生と連携していたから出来たことですよね。患者さんもお医者さんがいいって言ったというエビデンスがあれば、不安がなくなり集中してトレーニングできますよね。

 そうですね。もちろん治療には必要な薬があります。しかし、フィジカルの面でサポートすることで、薬の副作用により生活に支障が起きたり、精神的に落ち込むことが回避できればと思います。だからこそ、田村先生と進めているような、医療従事者と連携した講座をもっと増やしていく必要があります。

松田 辻先生がおっしゃる医療との連携ということを考えると、トレーナーさんも医学的な知識が必要ですから、お医者さんと一緒に作る講座は大事ですね。逆に、医療の観点からピラティスについて知りたいと思っている医療従事者もいるんじゃないですか。

 そうなんですよ。最初に乳がん学術学会でピラティスを紹介させていただいたときも、患者さんや医療従事者の方がたくさん来てくださいました。中には、「乳がんの患者さんに向けて運動したほうが良いのは分かっているけど、どんな運動を勧めていいのか実は分からない」とおっしゃる先生もいました。

例えば、抗がん剤治療をしている人は疲れてしまうので心拍数を上げることが推奨できません。ゆっくりと過度の負担がない運動=ヨガかなと思っていたけど、ピラティスって医療でもよく聞くから聞いてみようというレベルでした。それが今は少しずつ広まってきています。

松田 今までピラティスはヨガに近いのかなというイメージがありましたが、先生のお話を聞いているとピラティスは筋肉(インナーマッスル)を使ったトレーニングをして元気になるんですね。ピラティスに対するイメージが変わりました。

医療との連携、次の展望は

松田 辻先生はいろいろな形で医療との連携を図っていますが、新たに取り組んでいこうと考えていることはありますか?

 ワークショップだけでなく全国とオンラインでも繋いで全国どの地域に住んでいるトレーナーでも学べ、患者様もワークを受けられる仕組みを作りたいと思っています。以前、ある地域でピラティスのトレーナーさんのワークショップを開いたんですね。そのときに、関心のあるものとそうでないもののトレーナーの差をすごく感じたんです。今後、医療との連携を広めていくためには、トレーナーのレベルアップが必須だと考えています。

松田 特に、都心部以外ほど年配の方が多いのでトレーナーが必要ですよね。

 医療従事者とトレーナーが連携して、お医者さんがいいって言ったからやろうと言えば、患者さんも安心してやってくれると思うんです。今取り組んでいることが広まって全国でできるようになれば、高齢化社会でも元気なご年配の方が多くなると思うんですよ。

松田 それが実現できたらとても素晴らしいことですよね。それでは最後に、ピラティスと医療を連携させていく中で、目標としていることを教えてください。

 トレーナーの質を上げることや、もっと病院や先生と連携を深めていくこともそうですが、一番の目標は病院のリハビリテーション室でピラティスも導入していただき、私たちが作っているプログラムを一緒にやってもらうことです。とてもハードルが高いですが、絶対に実現させたいと思います。

辻茜先生 Akane Tsuji
Body Making Studio Aulii代表
一般社団法人ウィメンズヘルス協会 代表理事

幼少よりクラシックバレエを始め、1996年松山バレエ団入団。2000年パリに留学後、渡英。Vienna Festival Ballet にてファーストソリストとして活躍。怪我を機にピラティスに出会う。2006年ネバダ州立大学にてドリー・ケラペスに師事、 ネバタ州立大学公認ピラティスライセンスを取得。ラスベガス、カリフォルニアのピラティススタジオにてインターンを行い、マスタートレーナーとして養成講座も担当する。 帰国後は、都内スタジオを中心に数多くのグループクラス、一人一人に合わせたオーダーメイドのプライベートクラスも行い、一般の方からダンサー、アスリート、妊婦まで丁寧な指導を行う。妊娠を機に一般社団法人ウィメンズヘルス協会を立ち上げ、医療と連携し、マタニティーピラティスや乳がん術後ケアピラティスも手がけ、女性のためのヘルスケアプログラムを制作。

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