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インタビュー「ポキッと折れるんです® / 株式会社長寿乃里」

他社とは違う切り口でPR!
メディアに「なぜ?」と興味を持ってもらうことで 取材依頼が殺到!

スキンケアやサプリの製造・販売をしている「長寿乃里」が、
折れる傘『ポキッと折れるんです』を郵便局で販売し、ヒット商品となっています。
なぜスキンケアの会社が傘を販売したのか━━。
商品コンセプトともに、郵便局での販売やメディア戦略について
新規事業部の真柄考幸さんにお話を伺いました。

環境問題を見つめ直すために、「折れる傘」を販売!

株式会社長寿乃里 真柄 考幸さん

━━『ポキッと折れるんです』は、2016年12月から販売を開始し、20万本以上売れるヒット商品となりました。もともとスキンケアの製造・販売をされている御社が、なぜ傘を販売することになったのですか?

真柄 弊社では主軸であるスキンケアやサプリ以外にも、飲食やヘアサロン、エステなどの事業も行っていますが、新しい事業に取り組む機会はあまり多くありませんでした。
ただ、毎日のように関連会社や取引先の会社から、「こんなものを作ったんだけどどう?」とか「次はこんなものが来るよ」といった様々な情報が、弊社の社長(宮田聖士氏)のところに入ってくるんです。その中の一つが傘だったんですよ。
近年、台風の後に街中に壊れた傘が捨てられていて、ゴミになると問題になっていますよね。散乱していると美観を損ないますし、回収には多額の税金が使われています。弊社では廃棄問題や生活環境問題に積極的に取り組んでいることから、傘を通じて環境問題を見つめ直したいとの想いで販売することにしました。

━━現在は安価のビニール傘が主流となっていますが、差異化を図る狙いで、あえて「折れる」というコンセプトで作ろうと考えられたのですか?

真柄 関連会社から提案があった時点で“折れる傘”というコンセプトだったんですよ。ただ現在の商品とは少し形や質が違いました。当時はそよ風でも折れてしまって、折れる部分の固さが安定していませんでした。そこで、まずは風速15mで折れるように設計を見直しました。
あとは、一部金属が入っていたのをグラスファイバーに変更したり、UVB波を95%カットしたりと、機能面でいろいろ改良しました。また、荷物が濡れないようにサイズを少し大きめの65㎝にしたり、もともと一色だけだったものを二色展開したりして商品化に至りました。
最大の特徴は、傘の骨にヒンジ(蝶番)が備えられていて、強い風を受けるとヒンジの部分が外側に“ポキッと折れて”、風圧に耐えられること。折れた傘は再度閉じて開くことによって、元通りになります。

強風を吸収できる構造になっていて、閉じて開くだけで何度でも使える『ポキッと折れるんです』

広告宣伝になる場所として、郵便局で販売!

━━『ポキッと折れるんです』は、直営店や家電量販店などに加えて郵便局でも販売されていますよね。なぜ郵便局で販売することになったのですか?

真柄 弊社はスキンケアやサプリをB2Cで販売してきたので、B2Bのお付き合いがほとんどありませんでした。主力商品の洗顔石けん『然−しかり− よかせっけん』は累計2400万個以上売れていますが、小売大手の会社に電話で「よかせっけんの長寿乃里ですが、傘を作りました」と営業しても、先方からすると「えっ?」という感じですよね(笑)。
大手での販売が難しかったので、販売をするにあたって二つ路線を作りました。一つは「販売チャンネルが広がるもの」。これはコンビニで販売したかったのですが難しくて…。もう一つ「売る場所自体が広告宣伝になる意味を持たせるもの」として、郵便局で販売しようと思ったんです。

━━しかし郵便局で販売するのはとてもハードルが高いですよね。

真柄 そうですね。ただ、追い風として当時、日本郵便さんが物販強化に力を入れていたんですよ。元々、弊社の通販事業でお付き合いがあったことから話がまとまって、郵便局で販売することになったんです。
そこで、郵便局での販売方法を模索していったのですが、これが大変で…。配送費はかかるし、在庫管理は大変だし、これは無理じゃないかなと…。
今でこそ全国4500局以上で販売していますが、最初は南関東支社(神奈川県、山梨県)でテスト販売することになりました。

━━最初はどんな反響だったのですか?

真柄 全く売れませんでした(笑)。一般的に郵便局でモノを売っているというイメージがありませんからね。最初は、1局で1日1本、月22日営業するとして月22本ぐらいは売りたいと思っていたんですけど、それってすごくハードルが高いんですよね。そこで、まずはお客様に郵便局で傘を売っていることを知ってもらうために什器を作り、郵便局の一角を弊社のお店にしようと考えたんです。什器を作ったことで、納品した2000本が約3カ月で完売しました。

━━テスト販売とはいえ、3カ月で2000本完売とはすごいですね。

真柄 確かに完売したことは嬉しかったのですが、仮に2000本を169局で販売したとして、1局あたり3カ月で約12本、1カ月で4本、1週間で1本…、これでは商売にならないなと思いました。
そこで、全国展開するにあたり日本郵便さんでプレスリリースを打ってもらうことにしました。なんとかメディアに取り上げていただくために、当時、郵便局の物販としては展開局数が一番多い4500局での販売にして話題作りをするなど、メディア戦略を構築し始めました。
また、傘を通じて環境を見つめ直したいということをお客様に伝えるために、弊社の社名はほぼ露出せず、「なぜ郵便局で傘を売っているの?」と興味を持ってもらうような打ち出し方をしました。そこが一番の分岐点でしたね。

情報を発信するのでなく、
メディアが取材に来るような仕組みを考える!

━━メディアに「なんで?」と思ってもらうことで取材依頼が来て取り上げてくれる。それが結果として『ポキッと折れるんです』や会社のPRになるということですね。

真柄 そうなんですよ。私たちは『ポキッと折れるんです』を販売するにあたってフェーズを三つに分けました。
 第1フェーズは皆さんに「なんで郵便局で傘を売り始めたの?」と言ってもらうこと。弊社がユーザーに対して一人称で情報を発信しても一方通行なんですよ。本来なら興味を持った方が「なんで?」と聞いてくれるようにしないといけないですし、メディアから発信してもらった方が圧倒的にPRになりますからね。「なんで?」と興味を持って頂き、郵便局に問い合わせると、最終的に弊社へ回ってくるので、結果、弊社の方で話ができるわけです。
 そして第2フェーズは、「どうやら長寿乃里っていうスキンケアの会社が折れる傘を作って売っているらしい」と話題になることで、「なんでスキンケアの会社が傘を売っているの?」と興味を持ってもらうこと。こちらから発信するのではなく、メディアの方から話を聞かせてほしいという形を作ることで、商品のことや弊社の理念をお伝えすることができるわけです。郵便局で売るというのは、そのあたりの意図があったんですよ。

━━まさに私たちが「なんで?」と興味を持って取材をお願いしたわけです(笑)。商品名を『ポキッと折れるんです』にしたのも、話題作りの一つなんですか?

真柄 そうですね。折れるという機能をどうやって打ち出していくか考えて、「ポキット」、「ポキバ」、「オレール」、「ポキオーレ」など、いろいろ候補はあったのですが、「ネーミングから機能を連想できること」、「目にした人の印象に残ること」、「短縮しても言えること」という3点から商品名を『ポキッと折れるんです』にしました。

━━コンセプトはもちろん、他社とは違う切り口でPRしたことがヒット商品になった要因の一つだと思いますが、郵便局で売れた一番の要因は何だと思いますか?

真柄 一番は、モノを売るイメージがない郵便局があえて販売しているのだから…という郵便局ブランドへの信用ですね。あとは販売局の多さ。郵便局の数は大手コンビニの数よりも多いんです。さらに、ある程度人がいるところには島であっても存在するので、日本全国隅々まで商品を展開できるというのも大きかったと思います。

グローバルスタンダードを目指し、子供たちに訴求!

━━今年の2月からは子供用の『ポキッと折れるんですKIDS』を販売されましたね。なぜ子供用を販売しようと考えたのですか?

真柄 子供用の傘を作る構想は初期の段階からありました。小さいお子様が強風で飛ばされたり、生地が飛ばされて骨が突き出た鋭利な状態で街に捨てられていたら危ないですよね。お子様の安全のために必要だと思ったんです。
 また、子供のうちから安全で安心な傘を使ってもらい、物を大切にすることから環境問題を考えてもらうきっかけになってほしいと思ったんです。そして、こういう機能が付いた傘がグローバルスタンダードになってほしいという想いもあります。そうすれば、本来の目的である環境問題も改善していくと思うんです。
 さきほど、第1、2フェーズについてお話ししましたが、第3フェーズが “グローバルスタンダード”なんです。そのためには子供たちへの訴求が必要だと考えました。

━━子供用に機能面でもいろいろと改良されたんですか?

真柄 かなり強い反射板を使ったり、露先の部分を丸くしたり。あとは生地の一部を透明にして窓を付けることで視野を確保したり、手を挟まないように手動で開くようにしたり、お子様の安心・安全という面でいろいろ改良しました。

━━子供用の傘を販売するときは、どのようなメディア戦略を考えたんですか?

真柄 まずは大人と同じように子供たちにこういう傘を作っていることを知ってもらうことが大事だと考えました。子供たちに情報を流して知ってもらうには、テレビかマンガか先生だと思って。
 掲載の経緯については申し上げられませんが、進研ゼミの4年生8月号の巻頭読み物としてマンガで掲載していただけることになりました。他社とは違う切り口で勝負しないと、グローバルスタンダードにはできないですからね。

━━商品名は『ポキッと折れるんですKIDS』ですが、他にもいろいろ候補があったのですか?

真柄 実は宮沢賢治の作品にちなんで、「雨にも負けず風にも負けず、ポキッと折れて安全な傘」というところから『みやざわけんじ』という案もあったのですが、社内から反対意見がありまして(笑)。結局、『ポキッと折れるんですKIDS』になりました。

━━グローバルスタンダードに向けて、いろいろな展開をされていますが、今後はどのような展開を考えていますか?

真柄 営業的な販路でいうと、道の駅やサービスエリアで販売していきたいと思っています。それぞれ地場の産業や野菜が入っていますが、『ポキッと折れるんです』も現地に行かないと買えないという限定感を出していきたいですね。弊社の事業自体がCSRになることが一番の強みだと思っていますので、今、直営店のみでテスト販売しているグリップカバーを使って、例えば「〇〇織」や「〇〇染」など、地域の企業様と組んで特色を出していくことで地場産業を復活させたいと思っています。
また、福井県鯖江市から「めがねのまちさばえ応援企業」に認定され、鯖江市の子供たちに『ポキッと折れるんです』を寄贈しましたが、今後は行政と組んでいろいろな活動をしていきたいですね。
商品自体も常に改良を重ね、必要とされ続ける商品に育てていきたいと思っています。そしてグローバルスタンダードにすべく、これからもチャレンジし続けていきます。

株式会社長寿乃里
新規事業部 次長
真柄 考幸(まがら たかゆき)さん

株式会社長寿乃里
〒220-0001
神奈川県横浜市西区みなとみらい3-6-3 MMパークビル 12F
TEL0120-155-355
URL:www.pokkit-kasa.com/

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