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全国のベンチャー企業がフェアに挑戦できる未来をつくる

資金調達の手段としてクラウドファンディングはすでに認知されていますが、新たな資金調達の方法として2017年に株式投資型クラウドファンディングがスタートしました。今回は、日本で初めて株式投資型クラウドファンディングサービス「FUNDINNO」の運営を始めた日本クラウドキャピタル代表取締役COO 大浦学さんと、取締役 松田悠介さんにお話を伺いました。

ウェブ上から資金調達できるチャンスをつくりたい

━━御社は、日本で初めて株式投資型のクラウドファンディングサービス「FUNDINNO」を運営されましたが、どのようなきっかけで始めようと思われたのですか?

大浦 僕は大学院在学中にIT系の会社を起業したのですが、3年ぐらい経ったときにアメリカで新しい資金調達の方法として株式投資型のクラウドファンディングが出てきて、Uberなどベンチャー企業が利用して資金調達を成功させていたんです。
もともと日本のベンチャースタートアップの資金調達環境に問題意識を持っていたので、日本にもこういう仕組みがあったらいいなと思っていました。ただ当時日本では、株式投資型クラウドファンディングをやることができませんでした。しかし、金融商品取引法が改正されて日本でも可能になったので、すぐにライセンスを取得するために動きました。
僕たちがビジョンに掲げているのが「フェアに挑戦できる未来をつくる」こと。何かビジネスをしたいと思ったときにネックになるのは資金のことが多いと思うんです。そんなときにウェブ上から資金調達できるチャンスがあるという世界観をつくりたくて日本クラウドキャピタルを創りました。

━━ライセンス取得に動き始めてから実際にスタートするまでどのくらい時間がかかったんですか?

大浦 2016年から準備をして、2017年4月末に最初の案件をローンチできたので、1年半ぐらいですね。最初は3カ月ぐらいでライセンスを取得できると思っていたんですけど、予想外に時間がかかりました。

━━2017年というと、クラウドファンディング自体は一般の方にも広く認知されていたと思いますが、株式投資型は日本初なので知らなかったと思います。その中で、多くの人に認知してもらうためにどのようなPRをなさったのですか?

松田 周知していくためにいろいろとPRは続けました。クラウドファンディングには投資型と非投資型がありますが、僕たちが運営している「FUNDINNO」は投資型です。クラウドファンディングという名前は付いていますが、現実的には未公開株でエクイティファイナンスします。それをウェブ上で完結するという話をしても誰も分かってくれません。結局、「株式投資型クラウドファンディングって何?」となるので、ベンチャー企業が参加するセミナーなどに登壇し続けて、やっと少しずつ認知されてきたという感じですね。

━━確かにクラウドファンディング自体は知っていても、株式投資型と聞くと「何?」ってなりますよね。

松田 簡単に言うと、購入型はモノやサービスなどがリターンですが、株式投資型は非上場企業の株式が取得できるんです。今までは、基本的に日本のベンチャー企業のファイナンス環境は、どちらかというとデットと言われる借入しかありませんでした。会社を創って登記簿謄本ができたら、政策金融公庫に行って創業支援をもらう。ある程度、売上が伸びてきたら、地方銀行から融資をいただく。でもこれは連続的ではなくて、一回融資したら与信枠がいっぱいになってしまうんですよ。
今まで非上場企業への投資というとベンチャーキャピタル(VC)という一択しかありませんでしたが、僕たちは、ピクチャー段階で最初に資金を調達する環境を作っていきたいんです。それによってブリッジファイナンスの一つとして、次の銀行などへの綱渡しをしていければ、ベンチャー企業の成長の速度が上がっていくと思います。さらに、ビジネスとして魅力的だけど、資金調達できずに衰退していった企業を救えるような環境を今作っているところです。

案件の品質を担保し続けて信頼性を高める

━━資金調達までの一連の流れを教えていただけますか?

松田 僕たちは有価証券を取り扱うので証券業になります。例えば、2,000万円の募集をかけて満額集まった時点で基本的には投資は完了します。そこから基本的には8日間で約定します。8日間が終わった後に、投資家からの支払い、発行者への払い込みが行われ新しい株主が誕生します。ここまでの流れで約3週間です。
審査は、最初にインターネット経由で募集をかけます。資金調達をしたい企業様から応募を頂いたら、まず審査をします。主要取引先や株主、経営者などの2等身以内の反社チェックをして、その後、決算書や株主名簿、登記簿謄本など、一次書類を見させていただいて募集をかけられる段階にあるかどうかを判断します。

日本クラウドキャピタルCOO 大浦学さん

大浦 例えば、過度な債務超過であったり、まだビジネスとしてあまりにも脆弱すぎるという場合であれば、その時点で審査には落ちてしまいます。一次書類で、投資が集まりそうで、かつビジネスモデルとしても成熟していくと判断した場合は、事業者のヒアリングを行います。次に、審査部が中心となり審査を進めていきます。経営者的な目線で財務的な部分やビジネス的な部分をきちんと見ていった上で、あとはリーガル的なところですね。ここもコンプライアンス上問題がないかをきちんと見ていきます。審査会議において、CEO、COO内部管理統括責任者、コンプライアンス部長、広告審査部長の全会一致で審査通過となります。

募集ページの作成をして募集が始まります。ここまでが約1カ月ぐらいですね。ですから着金完了までは最短で1.5カ月といったところです。

━━やはり審査はすごく厳しいんですね。

松田 そうですね。現在(2018年12月時点)、約13,000人が登録されています。何をもって投資するかというと、僕たちのプラットフォームの信頼性なんですよ。そうすると案件の品質を担保し続ける必要があるので、当然審査も厳しくなってきます。全ての企業が成長していくわけではありませんが、その確度を高めてくための審査をしているということですね。

大浦 審査のときに見ていくポイントって監査に近いようなところがあるんです。財務諸表と言われる決算書とかに書いてある数字が正しいのか一つひとつエビデンスをチェックするなど細かく審査していきます。

━━資金を調達したい企業同様、投資家の方の審査も厳しいんですか?

大浦 有価証券を扱うとなると、スクリーニングをきちんとやらないといけないんです。まずは反社チェックですね。そして一番は投資歴や金融資産。あと年収というところになってきますね。リスクマネーをきちんと払える環境なのかどうかというところで審査を設けています。ただ厳しいといっても、今は月に1,000人ぐらいづつ増える計画で進めています。

━━案件的には、どのような業種が多いんですか?

大浦 審査を通るのは全体の1割もいかないのですが、創業3年未満ぐらいのIT系が多いですね。あとはテクノロジー系も多くなっていますが、僕たちが業種を絞っていることは一切ありません。できればいろいろな業種があった方がいいと思っています。

松田 ITやテクノロジー系が多いのは、投資家層が20代から30代で約9割を超えているということが関係しているかもしれません。そういった銘柄の方が、その年齢層の方とマッチングしやすいんですよ。投資家の方の興味から外れた銘柄だと、やはり資金が集まりにくいというのはありますね。

━━エンジェル投資家の年齢層はもっと高いと思っていたので、20代から30代が9割とは驚きました。成約率はどのくらいなんですか?

大浦 8割強ぐらいですね。

━━購入型と比べて株式投資型のメリットはどういうところですか?

大浦 購入型の場合、ユーザー側はモノやサービスが貰えるところですよね。企業側からすると、クラウドファンディング上で商品やサービスを売れることがメリットです。対して、株式投資型の場合は、投資家は投資によって企業の株を購入する事になります。企業側からすると資本金として入ってきて返済義務もないところがメリットですね。

松田 購入型のクラウドファンディングもそうですが、どちらかというと株式投資型が一番比べられるのはベンチャーキャピタルと言われる投資会社さんですね。投資会社さんの場合は、ある企業が資金調達をしたいとなったときに、審査をしてOKだったら投資しますが、一社で株を大きく持って行くというところがあるので、その分、一社の意見が強くなってきます。
逆に株式投資型の場合は、いろんな人たちに分散して株を保有いただく形なので、一社で株を持つようなベンチャーキャピタルとは大きく違います。株式投資型で資金調達される企業様は、資金調達したいということと、マーケティングを行いたいという人がいますが、投資してくれた人は数十万円の投資の場合は応援の意味合いが強く、その会社の商品を購入してくれるユーザーに転換していくパータンもあります。企業が株主を増やしてリレーションを築いていくことで、逆に商品を購入してもらえる人たちをふやす手法としても使えるところが、大きな特徴としてあると思います。

エンジェル投資の民営化と地方創生

━━2017年4月にスタートして約2年経ちましたが、今後はどのような展開を考えていますか?

大浦 今まで一番重視してきたのは、いかに案件を出すか、そして投資家の方を増やして資金調達の場としてのポジションを確保していくかということでした。ただ、資金調達の部分だけを見ていても、この市場は発展していきません。資金調達した会社が成長して株価が上がることで、投資家の方にも利益が出るような流れがとても重要だと思っています。入口、成長、出口で言うと、成長と出口のところをしっかりと整えて、投資家の方もキャピタルゲインを得るようなハッピーな環境が作れれば、市場が盛り上がっていくと思います。
また5年後の中期目標としているのが「エンジェル投資の民営化」。今はまだ「エンジェル投資って何?」という方が多いと思いますが、皆さんが周知して小額でも投資できるというようにしたい。今日本で証券口座が1,000万口座ありますが、未公開の非上場会社のエンジェル投資は1、2万口座です。仮装通貨でも60万口座あるので、僕たちも100万、200万口座ぐらい持てるようにしていきたいです。

━━「エンジェル投資の民営化」って面白いですね。そのためにも、やはりエンジェル投資家というのをもっと広く周知していく必要がありますよね

松田 今までは、ベンチャー企業に投資したい、若者を支援したいと思ってもプラットフォームがなかったので、投資できなかったんですよね。日本ではエンジェル投資家ってすごくマイノリティーと捉えられていますが、潜在的には多いんですよ。海外のようにもっとスタンダードになってほしいと思っています。

大浦 今までは、500万とか1,000万とかポンと出せる人じゃないとエンジェル投資ができなかったので、すごくハードルが高かったんですよ。ただ、数十万から投資できますってなるとやってみたいという人は予想以上に多かったですね。特にウェブとかインターネットの世界でできるとなると、やりたいという人が多くいたので、それをもっと広げていきたいんです。先ほど、お話したように今は20代、30代のエンジェル投資家が多いですが、もっとマスに当てて、40代、50代もの層も増やしていかないと認知は上がっていかないと思っています。

松田 最終的に「FUNDINNO」というプラットフォームは、何で優位性を持つかというと「案件」しかないんですね。システムや審査基準などは、他社とあまり変わらないですが、どういう案件、銘柄が出ているかというところで判断されると思うので、「FUNDINNO」には投資家の方が興味を持つような案件がたくさん出ていることが大切だと思っています。

日本クラウドキャピタル 取締役 松田悠介さん

━━そういう意味では、先ほどのIT系やテクノロジー系以外にも、いろいろな案件が必要ですよね。

松田 そうですね。例えば、商店街にお肉屋さんしかないと、たぶん誰も行かないですよね。魚屋や八百屋など、いろいろあるから皆さん行かれると思うんですよ。
今、証券市場と言われるものは3,600社ぐらい上場企業があるんですね。そのうち東証で約2600社、マザーズ約270社、ジャスダックで約720社、名証・札証・福証の上場企業は112社になります。(日本取引所グループ発表、東証、大証で本日付け(2019年1月28日現在)上場会社数は3,651社です。)

そんななか僕たちが今もう一つテーマにしているのが「地方創生」なんですね。地方で頑張って関東や関西に出てきてしまう企業が多く、地方の企業がどんどん減っていく中で、地方のベンチャー企業を育てていくことが使命だと考えています。ウェブを介したファイナンスインフラを構築した以上、日本全国どこにいても資金調達はできます。地方のベンチャーを開拓していって上場までのストーリーを描いていける形を作っていくことで、いろんな案件、銘柄が出てくると思うんです。

━━地方で頑張って上場できるような形を作れたら素晴らしいですね。

松田 それをやらないと、どんどん地方は疲弊して雇用がなくなります。そうすると、結局、働くために中央に行くしかなくなり、地方の人口が減り消費が減る、という負のスパイラルになってしまいます。そうならないためにも、地方のベンチャー企業の育成というのが大事になってくるんです。

大浦 僕たちの最終的なビジョンは「フェアに挑戦できる未来をつくる」ことですが、何かに挑戦したい、新しいビジネスをしたいと思ったときにボトルネックになるのってお金だと思うんですね。資金調達の方法は、クラウドファンディングやICO(イニシャル・コイン・オファリング)などいろいろありますが、インターネットだとどこにいても資金調達ができます。

松田 今、第一種少額電子募集取扱業者として登録を受けているのは4社ですが、弊社がたぶん95%ぐらいシェアを取っているんですね。ただ、市場を作ろうと思うと寡占状態は良くないので、僕たちと思いを共有する会社さんが10社、20社と増えていってほしいです。そうすることで、もっと認知されていってマジョリティーになって、中央、地方関係なくフェアに挑戦できるようになっていくと考えています。

株式会社日本クラウドキャピタル
代表取締役COO
大浦学さん

明治大学大学院グローバルビジネス研究科でマーケティングを研究し、同研究科で代表取締役CEO柴原と出会う。ベンチャー企業の育成に貢献するお互いの理念が一致し、2012年5月にデジタルコンテンツの企画、立案、製作、開発を行うシステム会社を創業し、2年目には黒字化を達成。地域活性化アプリの開発から自治体との関係性が深まり、箱根町の支援を受け2014年1月に一般社団法人はこねのもりコンソーシアムジャパンの理事として創業し、 同法人の会員管理システム及び、UI/UXの設計を含めての包括的なWEBシステムの開発を行う。イベントの集客から WEBマーケティング、SNSマーケティング、CRM(顧客関係管理)などユーザーの満足度、ロイヤリティを高める実践マーケティングに従事。

取締役
松田悠介さん

株式会社スターリーシング、Lonesta Primula Bank 株式会社等多数の会社を設立。2014年に士業コンサルティング、士業への顧客紹介事業を展開する株式会社スターエージェント(現ギャラクト株式会社)の代表取締役として就任。FUNDINNOの審査における決算書等の書類の確保において税理士との連携が必要不可欠であることからシナジーを感じ、日本クラウドキャピタルの取締役に就任。

株式会社日本クラウドキャピタル
https://www.cloud-capital.co.jp/
FUNDINNO
http://renobeauty.jp/

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