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ECとリアルのコラボ受注会から見えてきた課題と発見!

去る6月20日~22日、GLANCE(グランス)とmederute(メデルテ)のコラボ受注会「スーツ&帽子のオーダーメイド受注会」が開催されました。両社ともオーダーメイドの商品を扱っていますが、リアルとECで販売方法が違うため、新たな発見も多かったようです。そこで、初のコラボ受注会を成功させたGLANCEの菅野志保社長、ファヴールマルシェmederute事業部の山岸嘉子、同じくバイヤーの松田野須子に、今回の受注会を振り返っていただきました。

ブランドを認知してもらうことが大事

━━6月に開催された「スーツ&帽子のオーダーメイド受注会」には、多くのお客様がいらっしゃいましたが、初めてのコラボ受注会はいかがでしたか?

菅野 すごくいい機会をいただくことができました。GLANCEのお客様は経営者の方が9割で、年齢も40代、50代の方が多いですが、受注会に来られたお客様から「帽子に興味はあるけど、今まで恥ずかしくて被っていなかった。今日はいい機会になった」という言葉をいただきました。なかには、一つ10万円以上する帽子を、夏物と秋冬物の二つご購入いただいた方もいました。山岸さん、おめでとうございます!

山岸 ありがとうございます。私にとっても、とても意味のある受注会でした。mederuteはECでの販売なので、今回、志保社長とコラボさせていただいて、リアル店舗で直接お客様の声が聞けたことはとても良かったです。「家に帰って、持っている帽子を被り直してみる」というお客様もいて、帽子に興味を持ってくださるきっかけになったのはすごくよかったなと思いました。そういう意味では、次に繋がるいい企画だったと思います。

菅野 mederuteの商品はECでしか販売していないので、今回、お客様が実際に手に取って見てくれたのは良かったですよね。やはりこの価格帯の商品は、きちんと接客して商品の良さを説明しないと購入していただくのは厳しいと思います。

松田 今はネットで洋服を購入するのが当たり前になりましたが、やはり接客は大事ですか?

菅野 プチプラのものはネットでも売れますが、高額商品は難しいですね。特に、mederuteのように購入者のライフスタイルに合わせて創り手がオーダーメイドで作成したものを販売するとなると、なおさら難しいと思います。私もオーダーメイドスーツを販売していますが、一人ひとり採寸して、お客様のパーソナルな部分やバックボーンをお聞きしながら提案することを大切にしています。mederuteの場合も、接客する場があった方がより商品に対して理解が深まりますし、逆に接客があれば、この価格帯の商品でも売れると思います。

山岸 そうですね。今回リアル店舗で販売をしてみて、お客様に商品の良さを伝えることの難しさを痛感しました。ただ、LPを見せながら商品の良さを伝えると説得力があって効果的だなと思いました。今後は、リアル販売でmederuteのことを口コミで広めることと、サイトを充実させること、この二つを共存させていくことで、リピーターのお客様がサイトに来てくれると思うんです。最初からECだけで販売するのは難しいのかなというのは、今回感じました。

菅野 ハイブランドもネットで販売していますが、それはブランドが認知されていて、どんな商品か分かっているから、店舗に行けない人がネットで買うんですよね。だからmederuteのことを認知してもらうためにも、都内に商品に触れられる場を置いて、お客様が直接手に取って見る機会を増やすといいかなと思いました。

松田 まずはmederuteや創り手のブランドを認知してもらわないと、ECでの販売は難しいのかもしれないですね。

菅野 イタリアのボルサリーノ、ニューヨークのロッドキーナンのように帽子メーカーのブランドとして認知されれば、ネットでのリピーターも増えていくと思います。これが、1万円とか3万円の商品だったらもっと気軽に販売できると思いますが、mederuteのように10万円を超えると、ネットで買うのは最初のハードルが高いかなと…。まずは、接客を受けて商品の説明を聞いたうえで、実際触れて、感じて、いいと思ったから買いに来て頂けるって感じだと思うんですよね。

松田 日本では、日常で帽子を被る文化が浸透していないから、いくら良いものでも価格が高いとネットだけ販売するのは難しいのかもしれないですね。

菅野 あとは返品の問題もありますよね。ネットの場合は購入後の返品も結構多いみたいですけど、mederuteの場合はオーダーメイドなので返品ができませんよね。しかもネットなので、自分で頭のサイズを測るというワンクッションが入るから、お客様の立場からすると優しくないと言うか、、、面倒をかけてしまうため余計遠のいてしまいがち。リアルな店舗があれば店員さんに採寸してもらえますからね。

山岸 そうですね。でも、すごくいいモノだということは自信を持って言えるので、お客様に認知してもらうために、もっともっと情報を発信していきたいと思います。そういう意味では、今回の受注会でいろんなご縁ができたことが一番大きかったですね。mederuteにご協力してくださる方の縁と、今回新しくできた縁を繋げていって、mederuteを認知してもらうためにもっと情報を発信していきたいと思います。

6月20日~23日、GLANCEで開催された「スーツ&帽子のオーダーメイド受注会」

━━確かにブランドを認知してもらうことは大事ですよね。GLANCEに来られるお客様も、ブランドとして認知していて商品の良さが分かっているから、毎回、お店に足を運ぶんでしょうね。

松田 志保社長の人柄も大きいと思いますよ(笑)。志保社長にトータルプロデュースしてほしい人が多いんだと思います。でも、それができるのは、オーダースーツの販売だけでなく、バイヤーとして海外に買い付けに行かれていて、いろんな商品を提案できるからなんでしょうね。同じバイヤーとしてお聞きしたいんですけど、志保社長はきちんと情報収集して商品を選びますか、それとも直感で選びますか?

菅野 直感です。ただ、私の場合は普通のバイヤーさんと少し違うと思います。お客様と顔を合わせてお話をして、直接身体に触れて採寸しオーダースーツを作っているので、「あのお客様はこんなスーツを作ったからこのネクタイが似合うな」とか、お客様の顔を思い浮かべながら買い付けているんです。そうすると、結果、一点ものになって他の人と被らないので、一人ひとりの個性を引き出すことができるんです。

山岸 一人ひとりのお客様に対して、こういうふうにスタイリングしたいというものがあるから、そのお客様に似合うネクタイとかがイメージできるんですね。

菅野 そうですね。だからオーダースーツに合わせたアイテムだけでなくて、カジュアルなアイテム、Tシャツからダウンベスト、ダウンジャケット、鞄、ベルトなども買い付けたりします。

松田 GLANCEのInstagram(インスタグラム)を拝見すると、コーディネートの写真がよく投稿されていますが、男の色気が出ているんですよ。あれは匠の技だなと思います。

GLANCE
菅野志保社長

━━オーダーメイドでスーツを作れるお店はたくさんありますが、やはりトータルプロデュースという部分が志保社長のこだわりなんですか?

菅野 そうですね。やはり他のオーダーメイド屋さんがやっていないことをやることですよね。ただ採寸して作って販売するのではなくて、お客様のパーソナルな部分や、こうなりたいというイメージ戦略、企業イメージなどを把握したうえでご提案しています。そしてスーツだけでなく、シャツ、ネクタイ、靴などはもちろん、ヘアスタイルまでトータルでプロデュースします。そこが他のオーダーメイド屋さんや百貨店とは違うところだと思います。

山岸 志保社長の場合は、女性目線で男性がモテるように仕上げていくんですよね。そこが百貨店などと差別化を図れているところだと思います。

菅野 実は10年ぐらい前に、ある大手百貨店から、「そういうイメージ的な部分に気を使えるように社員に教えてほしい」と頼まれたことがあったんです。でも社員の方が3,000人くらいいたので、当時はお店をオープンしたばかりだったこともあり現実問題として出来なくてお断りしました。

松田 当時はできなかったかもしれませんが、今は経営者とか企業に向けてファッションスタイルや着こなしについてセミナーを行っていますよね。

菅野 はい、センスアップ講座です。大企業の管理職や経営者の方とオーナー業の方の二つのパターンがあります。特に、オーナー業の方は、自分自身が看板なので、どう見られるかが大事です。例えば、経営者が100人集まる会合で、どれだけ自分の企業価値を上げられるかとか、イメージ戦略を持って接することができるかってすごく大事なんです。同じ紺のスーツを着ていても、ご自身に合っている形やクオリティーで醸し出しているものが違ってくるんですよ。それで業績が伸びるお客様が多いんです。

お客様にストーリーをイメージさせる

━━経営者に限らず、営業職とか普通のサラリーマンでも、見た目の印象とか、自分をどう見せるかって大事ですよね。セミナーもそうですが、お客様にこうした方がいいですよってアドバイスすると、皆さん意識が変わりますか?

ファヴールマルシェ
メデルテ事業部
山岸嘉子

菅野 変わりますね。「あなたはこうした方がもっと魅力的ですよ」って言うと、スーツの選び方やネクタイの結び方など変わりますよ。そうするとgoodですよね。

松田 女性はネクタイの結び方って、結構気になりますよね。この人はもっと太い方がいいとか、逆に細い方がいいとか(笑)。

菅野 そうですね。あとは、すごく簡単なテクニックなんですけど、男性のここをくすぐるとカッコよくなるというポイントがあるんですよ(笑)。

━━ポイントって何ですか?

菅野 今までの経験に基づいた直感的な部分もありますが、私の好みではなくて、お客様自身が着ていて背筋がグッと伸びて自信に繋がるものは何かを感じ取り、そこをくすぐってあげることですね。

山岸 これはもう、志保社長の才能ですよね。他の人には真似できないと思います。ご両親がフルオーダーメイドのテーラーを営んでいたので、家系もあるんじゃないですか?

菅野 どうですかね(笑)。両親も祖父も叔父もテーラーを営んでいましたが、実は私はアパレルをやろうとは思っていなかったんですよ。ただ、日本の男性ってもったいないなと思ったんです。

松田 もったいないとは?

菅野 日本では、“背が低い・太っている・髪の毛が薄い”って、あまり良いイメージがありませんが、海外ではすごくカッコいい方が沢山。イタリア人なんて、背が低くても髪の毛が薄くても、みんな綺麗な女性を連れていて、日本人と何が違うんだろうって思ったんです。お腹が出ていてもカッコいいのって、例えばシャツの着こなし一つだったりするんですよね。自分のサイズを分かって着ているから、セクシーに見えるんですよ。

山岸 なるほど。志保社長は、そこを理解しているから、お客様にアドバイスするとガラッと印象が変わるんですね。

ファヴールマルシェ
プロデュース事業部
松田野須子

松田 私も仕事柄、いろんな人に会いますが、仕事ができる人は、身なりや着こなしがビシッとしている人が多いですよね。

菅野 自分に気を使える人は周りにも気が使えるので、そういう人と仕事をしたいですよね。あと大切なのは“所作”だと思うんですよ。ただ、この帽子素敵です! っておススメするのではなく、接客するときに“ストーリーでご提案”するんです。例えば、「ホテルで会合がある。その際、クロークに立寄り、帽子を取って預けて髪型をサラッと手で整える姿。またレストランで食事の際、入り口でサッと帽子を脱ぎ、席に座る際、隣の席に帽子をそっと置く姿。この所作がすごくセクシーで素敵なジェントルマンらしい」ってイマジネーションを膨らませながらお勧めするんです。

山岸 なるほどね。日本人の男性って帽子を被るのに抵抗がある人が多いですが、ちょっとした考え方、意識の持って行き方で変わるんですね。こういうシチュエーションで帽子を被っていくとカッコいいのかなとイメージできると、帽子を手に取ってみよう、購入してみようって思うんですね。

松田 そこは美容業界も一緒です。私たちはサプリを販売していますが、ただ「このサプリは良いですよ」、「血液がサラサラになりますよ」と言っても購入してくれません。なぜこのサプリを飲む必要があるのかという“気付き”をあげないといけないところは似ているなと思います。

山岸 確かにそれはあるかもしれないですね。でも、接客をしている中で、お客様の心に響くワードやストーリーがパッと出てくるのがすごいですよね。

菅野 お客様に喜んでもらえるかな、自分が同じことを言われたら嬉しいだろうなってことを常に考えていると、自然といろんなワードやストーリーが出てくるんですよ。ただし、それを求めていない人には言いません(笑)。

松田 そこは、志保社長が単にオーダーメイドスーツを販売しているのではなくて、お客様一人ひとりのパーソナルな部分を知ることで、この人にはどういう物が似合うかって常に考えているから、そういうストーリーが出てくるんでしょうね。

ECだから出来ること

━━mederuteの場合はECでの販売なので、ストーリーを説明してイメージを膨らませてもらって購入というのはなかなか難しいですよね。

山岸 そうなんですよ。でも、志保社長のお話を聞いて、ネットでも画像やデザインを使って、そういうストーリーが浮かぶように見せていくことはやっていきたいなって思いました。全商品は無理でも、お勧めの商品を何点か絞ってサイトのLPを使って説明してくことは必要だなと感じました。

松田 行動しないと気づくことができないのでPDCAも回していけない。そういう意味では、今回受注会をしたことでいろんなことを気付けたのは良かったですよね。

山岸 そうですね。本当に、気付きがたくさんあったので出来ることから取り組んでいきたいです。お客様が志保社長のお店にまた来たいと思うように、私もサイトをまた覗いてみたいと思ってもらえるような工夫をしていきたいです。

菅野 こういうシチュエーションで、この帽子を被ったら素敵とか、帽子を被る場面の提案やストーリーを書いてみたらいいんじゃないですか。

山岸 そうですね。ぜひやってみたいと思います。あと、今は創り手さんのストーリーはあるんですけど、今後は購入していただいたお客様の“その後”のストーリーをサイトに載せていきたいと思っているんです。愛でる手さんはこういう仕事をしていて、こういうところで帽子を被っていて、こんなステキな生活を送っているというキラキラしたサクセスストーリーをサイトに載せていきたいなと。

菅野 すごくいいと思いますよ。そういうキラキラしたライフスタイルってすごく興味があります。

松田 高級なバッグでも海外では普通に売れていますし、生活に溶け込んでいる雰囲気が出るとイメージも付きやすいと思います。そこは逆にECだからこそ、写真や動画を使って見せていくといいかもしれないですね。

山岸 さりげなく帽子を被っているオシャレな男性を増やしたいので、今後も志保社長に協力してもらいながら、いろんなことにチャレンジしていきたいです。

菅野 受注会の第2弾として、秋冬のコートと帽子のコラボ受注会をやるのも面白いかもしれないですね。

山岸 ぜひやりましょう!

━━オーダー受注会の第2弾も楽しみですが、個人的に志保社長が今後挑戦したいことはありますか?

菅野 あります。お洋服だけでなく、小物や家具などライフスタイルをトータルでプロデュースすることです。今もスーツだけでなく、シャツや靴、ヘアスタイルなどトータルプロデュースをしていますが、今後はこの椅子を家や事務所に置きたいとか、この小物をプレゼントにしたいとか、ライフスタイルに必要なものをお客様に提供できたらいいなと思っています。ライフスタイルの発信基地みたいなサロンにしたいです。あとは、大人の社交場となるように、年に1、2回パーティーを開催していきたいですね。

山岸 でも、ライフスタイル全体をストーリーとして伝えていくのは難しくないですか?

菅野 難しいこともあると思いますが、例えば、ヨーロッパで良い椅子や小物があったら、バイイングして、ただ陳列、販売するのではなく、シーンやシチュエーションの提案や、香りなんかも「これはすごく色っぽい香りなので、こんなシーンで使うと効果的ですよ」っておススメすると「そう?」ってなりますよね(笑)。洋服と一緒で、使う場面をイメージしてもらうことが大事なんだと思います。

松田 志保社長が言うから説得力があるんですよね。同じことを他の人が言っても伝わらないと思います。ただ、志保社長のお話を聞いていて、ライフスタイルのトータルコーディネートに当てはまるようなメンズの美容商品を探してきて、お客様に紹介したら面白いだろうなって思いました。

菅野 すごくいいと思います。男性はまだまだ自分で化粧品を探すってことをしないですからね。松田さんが見つけた商品もそうですが、GLANCEに来たら良い物がある! 何か新しい発見がある! って思ってもらえるようなサロンにしていきたいです。

松田 アパレルと美容は市場が違うので、そこをうまくリンクさせていったら面白いですよね。それこそ、市場的には “ニッチ”だと思うので、ぜひ一緒にやりましょう!

菅野 今後も3人でいろんなことにチャレンジしていきましょう!

菅野志保
株式会社S’s代表
パーソナルスタイリスト/イメージコンサルタント
フルオーダーメイドのテーラーの家系に生まれる。一人ひとりのファッションニーズにあったパーソナルなサービスをと考え、イメージコンサルタントのライセンスを取得後、2004年に『GLANCE』を設立。また、トータルファッションプロデューサーとして、各種セミナーも多く手がけている。
http://www.glance.co.jp/

山岸嘉子
ファヴールマルシェ メデルテ事業部
世界中の「創り手=クリエーター」と「愛でる手=エンドユーザー」をつなぐ、情報発信型グローバルオンラインセレクトショップ『mederute』を運営。独創性に富んだ「創り手」が想いを込めて創り出すハンドメイドの商品を、その想いに共感する「愛でる手」へ届けている。
https://mederute.com/

松田野須子
ファヴールマルシェ プロデュース事業部
海外バイヤー・商品企画として、新しいトレンド、面白い商材、情報、人を探しに国内外問わず飛び回っている。海外展示会での情報収集や豊富な人脈を活かし、多くのヒット商品を生み出している。
https://bragoku.jp/author/matsuda/

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