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インタビュー「飲むお出汁 Oh! dashi(お!だし) / 株式会社椎茸祭」

日本伝統の“出汁”を新たなコンセプトで世界に発信

日本の食卓で昔から親しまれてきた「出汁」は、さまざまな料理に用いられています。しかし、そんなお出汁を、“飲み物”というコンセプトで打ち出した商品「oh! dashi(お!だし)」が、国内外から注目されています。いったい、なぜこの商品が誕生したのか。株式会社椎茸祭の竹村賢人さんにお話を伺いました。

世界中の人が美味しく食べられるお出汁

株式会社椎茸祭 代表取締役社長 竹村賢人さん

━━なぜ、椎茸を商材に起業しようと考えたのでしょうか?

竹村 新卒で入った会社を辞めた後に、インドに渡って現地で就職したんです。そのときに、周囲の40%ぐらいの人がベジタリアンでした。彼らは、海外で人気の日本のラーメンや鍋も鰹節やアゴ出汁など動物性のものが入っていて食べることができません。
実際、みんなで鍋を食べに行ったときも、日本人用とインド人用で別の鍋でした。好き嫌いではなく出汁に肉が入っているだけで食べられない人が世界中にたくさんいるので、ベジタリアンでも美味しく食べられる出汁が必要だと思ったんです。
日本には平安時代から、伝統的な食文化として植物性の食材だけで取る「精進出汁」があります。そういうものを日本の味として作ることが大切だと思ったんです。ビーガン専用ではありませんが、ビーガンの人も含めて誰もが同じもの美味しく食べられるものが作りたかったんです。そこで着目したのが、椎茸で作る出汁でした。

━━出汁といえば料理で使うイメージですが、「oh! dashi」は“飲む”出汁です。この着想は、どこからきているのでしょうか?

竹村 興奮したり怒っていたりするときに、よく「落ち着け」って言いますよね。あれは、息抜きだと思うんです。「はぁ」と息を吐いてリラックスしている状態。その状態を得るために、料理ではなく飲み物としてお出汁を取り入れてもらえたらと思ったんです。ドリンクとして飲んで息抜きをする機会を創出したいと思ったんですよ。炭酸飲料のように飲んで「やるぞ!」となるのではなく、むしろテンションを下げて「息抜きできる飲み物」ですね。コーヒーやお茶も「はぁ」って一息つきやすいと思いますが、どちらかというと食後に飲むイメージ。お腹が空いたときや夜中に飲むものとしては、お出汁が良いと思ったんです。

3つの部分で差異化を図って商品化

スタンダードな「oh!dashi」(10個入り)

メッセージカードを挿すこともでき、コミュニケーションツールとしても利用可能

━━息抜き用の飲むお出汁というのが、他の商品とコンセプトで差異化を図っているんですね。

竹村 そうですね、商品化に際し、3つの部分で差異化を考えました。一つ目は、今お話ししたように料理としての出汁ではなく、飲み物にしたことです。二つ目は、動物性ではなく植物性の出汁であること。そして三つ目が粉末ではなく液体にしたことです。粉末出汁は料理に使うイメージですが、それだとお湯を入れてマドラーとかで混ぜなければいけません。でも液体なら、お湯を入れれば混ぜずに溶けます。

━━「oh! dashi」に使う椎茸にも強いこだわりがあるんですか?

竹村 一口に椎茸と言っても天然栽培と人工栽培があり、さらに人工栽培には原木栽培と菌床栽培があります。原木栽培は香りの強いものが多いのですが、育てるのに2年半ほど必要で、その分コストもかかります。対して菌床栽培は、香りはそこまで強くありませんが、出汁にすると旨味があるんです。しかも、生産が早くコスト面でのメリットもあるため、そうしたものを組み合わせています。
また、椎茸は傘の開き具合で「冬菇(どんこ)」と「香信(こうしん)」に分けられるんですけど、傘が開いていない冬菇ほど香りが強いんです。出汁にするときに冬菇を使うと香りが強すぎるので、香信をベースにして、水戻しの冬菇を少し入れています。

発売イベントで初期ロットが完売

━━PRやプロモーションはどのようにされたのですか?

竹村 2018年7月7日に発売したんですけど、渋谷の100BANCH一周年記念で開催された「ナナナナ祭」で、「しいたけは飛び、そうめんは流れる」というイベントを開催しました。

━━どういうイベントですか?

竹村 そのままの意味なんですけど(笑)、自転車を漕いで発電した電気を使い、ビルの1階から3階まで椎茸を入れたカプセルをエアシューターで飛ばします。それを3階で受け取った人がそうめんを1階に流し、「oh! dashi」で味わうというイベントです。当日は300人以上の人が参加してくれましたが、皆さん状況がよく分かっていない中で、そうめんを食べて「oh! dashi」を買ってくれるという不思議なプロモーションイベントでしたね(笑)。でもこれが大盛況で、このイベントで初期ロットが全て売り切れました。

━━竹村さんは前職でデジタルコンテンツ制作会社のチームラボに勤めていらっしゃいましたが、そのときの人脈などもPRや販売促進に活かされていますか?

竹村 直接的ではないのですが、チームラボの繋がりから派生しているものはたくさんあります。最近でいうと、写真家の蜷川実花さんにSNSでシェアしていただきました。もともと、商品名やコンセプトもチームラボの人にアドバイスをもらいながら作ったので、今でも代表の猪子さんや元同僚には週1回ぐらいは会っていて、こういうふうに売っていったらとか、いろいろとアドバイスを頂いています。

国内にとどまらず、世界での販売を意識

━━現在はECと店舗での販売が中心ですか?

竹村 そうですね。店舗は、日本百貨店さんや高島屋さんで販売しています。その他、国内ではレストランなどにも卸していますが、飲料ではなく料理やスープに使われることが多いですね。
また、無人販売機を作ってオフィスに置いてもらっています。ウォーターサーバーに磁石でくっ付けて、100円を入れて買えるようにしているんです。まだ数社にしか設置していませんが、お湯を入れればそのまま飲めるので、コーヒーとかお茶を飲むのと同じ感覚で飲んでいただいています。

オフィスに設置している無人販売機

━━もともと世界中の人に日本の美味しいお出汁を味わってほしいとの思いからスタートしましたが、海外への販路は考えているんですか?

竹村 もちろんです。昨年ベルリンに行ったときには、飛び込みで営業してベルリンとミラノで受注することができました。もちろん事前にアポを取っていたところもありましたが、海外の場合は飛び込みでも結構話を聞いてくれるんですよ。また昨年はジェトロの輸出支援企業に選ばれて支援していただいており、ジェトロさんと一緒に回って営業したり、昨年4月には世界三大見本市の「ミラネサローネ」で展示させてもらうなど、少しずつ海外にも進出しています。
もともと世界を意識して作った商品なので、「oh! dashi」という商品名も、「odashi」ではなく、「oh!」というサプライズみたいなものがあったほうがいいと思って「oh! dashi」にしたんです。デザインや書体、カラーなども全て海外の人が見たときに分かりやすいように意識して作りました。

お部屋で簡単に椎茸栽培ができる「しいたけハウス」

━━最後に、今後の取り組みについてお聞かせください。

竹村 オフィスに行くと普通に「oh! dashi」が置いてある、それくらい身近なものにしていきたいです。そのためには、もっとバリエーションを増やしていく必要があります。また、どういう環境で育った椎茸で、どういう検査を経て、どんなものを混ぜて商品化した、という製造過程を全て明らかにしていきたいです。現在も、原木栽培をしていますが、ゆくゆくは自分で作った椎茸だけを使って商品化したいと思います。

株式会社椎茸祭
代表取締役社長
竹村 賢人(たけむら けんと)さん

株式会社椎茸祭
〒150-0002
東京都渋谷区渋谷1-11-1
COI西青山ビル6階
TEL.080-3365-1657
URL:https://www.shiitake-matsuri.com/

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