美容業界初の会員システムを導入。業界内外から注目を集める新たなビジネスモデル。
- 2019/1/30
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- bragoku編集部
お客様とコミュニケーションが取れる空間
━━田中さんは、美容師としてサロンに勤務されるだけでなく、芸能人のヘアメイクを担当されたり、講演されたりと、幅広く活動されていた中で、Reno Beauty株式会社を立ち上げられたんですよね。
田中 会社を立ち上げたのは30歳になる手前ぐらいでしたが、以前からトータルビューティーカンパニーを目指したいという思いが強くありました。サービスがあってプロダクトがあって優秀なクリエーターがいるような会社にしたい、という理想を実現するためにいろいろな活動をしています。
━━その中の一つが会員制ビューティーサロン「Reno801(リノ・ハチマルイチ)」なんですね。普通のサロンではなく、一席のみの完全プライベート空間でマンツーマンの施術が受けられる形にしようと思ったのはなぜですか?
田中 僕の働き方も特殊かとは思いますが、美容室だけではなく、いろんなところに行ってヘアメイクの仕事をします。予約も美容室で受けるのではなく個人的に連絡を頂いてという形が昔から根付いていました。ですから、ある意味、必然的というか。もともと、完全個室でマンツーマンという形が理想だったんです。大手サロンに勤めていたときは、受付する人、シャンプーをする人、カットをする人と、それぞれ担当がいるので、一人のお客様に複数の人間が関わるという流れを毛嫌いするお客様も結構いらっしゃったんです。そんな中、マンツーマンできちんとコミュニケーションが取れる形に落ち着いたという感じですね。
たった一人のお客様のために用意された至福の時間をつくるプライベートサロン
アプリを使ってクラウド上で精算
━━クラウド上で来店利用ポイントを管理する会員制システムを美容業界で初めて採用されて、業界内外から注目されていますが、これはどのようなシステムなんですか?
田中 お客様にはプラチナ会員とブラック会員の2種類から選んでいただきます。プラチナ会員は利用可能時間が12時~19時で年会費30,000円、ブラック会員は10時~21時(パーソナルヘアケアセット1年分)で年会費150,000円です。その上で150,000pt~900,000ptまである6つのポイントプランから選択していただくのですが、そのポイントを専用のアプリに付与させていただいて、利用メニューに応じて減算していくシステムです。一年契約になるので、初回に現金やカードでお支払いいただければ、2回目以降はお金やカードを持ってくる必要がないんです。極端な話、1回目も振り込みであればお金は必要ありません。
━━アプリを使ってポイントで精算するので、変な話、手ぶらで来られるわけですね。
田中 そうです。これはReno801のコンセプトにも繋がってくるのですが、従来の美容室は、例えば受付して呼ばれるまでに5分、アシスタントの引継ぎで5分、お会計で5分など、これだけでも15分待ちます。しかし、Reno801では担当スタッフが一人で全て行うので、滞在時間が圧倒的に短くなります。通常の美容室と比べて、カットとカラーで30分ぐらい短いと思います。僕は昔から美容室だけでカットするのではなくて、外に出てタレントさんや経営者の方など忙しい人たちを担当することが多かったんです。ですから、Reno801のコンセプトがゲーテのファウストの名言「時よ止まれ」みたいに、「時間」というものをとても大事にしています。時間が長ければその分値段が高くなるのではなくて、逆に値段が高からこそ、お客様に短い時間で帰っていただくことがサービスだと思っています。
━━お客様のニーズに合わせてということですか?
田中 そうですね。これは価値観だと思うので、どこに重きを置くかということですね。忙しい方は、2、3週間に1回ぐらい来られるので、カラーにしても色持ちを長くするという考え方よりは、いかに滞在時間を短くという考え方にシフトしています。
━━「時間」という部分に重きを置いているところも、他の美容室と違うわけですね。
田中 そうですね。マーケティングでいうと、うちのサロンはかなり絞っていますね。完全なプライベート空間なので、ほとんどの方が滞在中にビジネスをされています。
「時間」こそが最高の価値
━━お客様一人ひとりにとって、このサロンの空間や時間を有効に使っていただける環境なんですね。
田中 最高の技術やサービスだけでなく、ここで過ごしていただく「時間」こそが最高の価値であると考えています。もちろん、そこに価値を求めない方もいらっしゃいます。隣に他のお客様がいてもいい、待たされても構わない。それより少しでも安い方がいいとか、駅から近い方がいいとか、どこに重きを置くかは一人ひとり違いますからね。
━━確かにそうですね。料金が安い方がいいと考える人もいれば、高くても時間が短い方がいいと考える人もいますよね。ただ、Reno801に来られるお客様、特に芸能人や経営者の方は常に周りから見られる立場なので定期的にケアをしないといけない。皆さん忙しいので時間や環境に重きを置いているというのは分かるような気がします。Reno801のようなプライベートサロンは他にはないんですか?
田中 プライベートサロンは増えていると思いますが、僕が知る限りReno801みたいな会員制でこういうシステムを取り入れているサロンはないですね。そもそも一席だけのプライベートサロンをやろうと思ってもなかなか物件がないですし、顧客を持っていないといけないのでハードルが高いんですよ。
一周年記念キャンペーンのプレミアムギフトチケット
「水と時」をテーマにしたPB商品
━━ブランディングという面では本当にニッチですよね。サロン経営だけでなく、4月にはPB商品のシャンプーとトリートメントを発売される予定ですが、コンセプトは?
田中 プロダクト自体は、今年から動き出して商品化は来年ぐらいを予定していました。ただ、中国に販路を広げていきたいと思っていた中で、昨年仕事で上海に行かせていただいたり、アーティストの中国ツアーに同行したりと、中国との関りが深くなってきたので、このタイミングを逃す手はないなと考えて、一年前倒しにしたんです。
Reno Beautyというのが、「リノベーション」と「ビューティー」をかけた造語なんですけど、「ビューティーに革命を」というのを一つのテーマにしています。そのリノからReno801という名前を付けたのですが、Renoをブランディングしていきたいと思っています。
成分のことでいうと、Reno801が重視しているのが「時間」なので、体内時計や体内リズムに働きかける成分を加えています。あとは、美容に対して僕自身ヘアメイクで一番気を付けている部分が「潤い(水分)」なんです。新生児は身体の90%が水分で、成人になると60%、老人だと50%と、年齢を重ねるごとに水分が減っていき体に張りがなくなっていきます。頭皮や髪の毛も一緒なんです。そこで今回の商品は「水と時」をテーマにして作りました。今後はメンズコスメも考えています。
━━田中さんは、観月ありささんや鈴木伸之さんなど芸能人のヘアメイクを担当されていますが、一般のお客様との違いはありますか?
田中 特に大きな違いはありません。芸能関係の方のヘアメイクも一般の方の延長線上にあるので。僕が担当させていただいているのは役者さんが多いんですけど、いろんな役を演じるのって日常に近いので、サロンにいろんなお客様が来られるのと一緒だと思うんですよ。例えば、この人は公務員、この人はIT企業の社長、この人は自営業というように、その人のライフスタイルに合わせたもの。役者さんであれば、その役柄に合ったものを提供するのが僕の仕事なので特別違いはありません。それに今はSNSが発達して、身だしなみに気を付ける人が多くなってきているので、良い意味でも悪い意味でも芸能人と一般の人との差がなくなりつつあります。
━━芸能人も一般の方も関係なく、一人ひとりのバックボーンを知ったうえで、その人に合ったものをトータルでプロデュースする感じですか?
田中 そうですね。僕はInstagramで「♯イキザマクリエイティブ」というハッシュタグを付けているんです。これは、その人の生きざまをクリエイティブしていきたいという思いがあるからです。今までどんなふうに生きてきて、これからどんなふうに生きていくのか。お客様一人ひとりの生きざまを美容の部分で手助けできればなと思っています。それで「♯イキザマクリエイティブ」とずっと付けているんです(笑)。
━━ファッションもそうですが、ヘアメイクも個性が出るのでプロデュースというのは分かります。芸能人や経営者ではなくて、例えば一営業マンでも、お客様と接する機会が多いですから、自分をどう見せるかというのは大事ですよね。
田中 そうですね。もともと芸能の方から一般の方にどう落とし込んでいくかという部分で、一番近いのが経営者なので一つの例として言いましたが、結局、お客様は全員同じだと思っています。
━━トータルプロデュースする上で田中さんがお客様にいろいろ質問されることもあると思いますが、逆にお客様からヘアメイクのことで相談されることも多いんですか?
田中 もちろんあります。小顔のことや自分に合ったメイクはどんなものか、といったことなどを相談されることが多いですね。そんなとき僕が聞くのは、「まずどうなりたいのか」、「何が悩みなのか」。この2点をきちんと聞くことができれば、そこからプラスアレンジしていくことはいくらでもできるので、ここが一番重要だと思っています。
━━トータルビューティーカンパニーを目指すための今後のビジネス展開を教えてください。
田中 僕自身は、クリエーターから起業家へとシフトチェンジしていっている段階ですが、クリエイティブの仕事は続けていきます。その中で、トータルビューティーカンパニーを作るために、Reno Beautyならではのサービスや商品を作って確立していきたいです。
また、業界的にカリスマサロンブームがあって、その後1,000円カットとか安いサロンが出てきました。もともと100店だったものが極端な話1,000店に増えています。そんななか、独立してもお店をオープンするのではなく、美容室の席だけを借りる面貸しというスタイルを取る人も増えています。僕の中では、席を借りるんだったら個人のプライベートサロンをやった方がいいと思っているんです。そのためには、うちの会員制システムをうまく広げて、育成も含めて多くの人たちがプライベートサロンを経営できるような環境を作っていきたいと考えています。
Reno801としては、現在は紹介制ですが、昨年から1周年の記念でギフトチケットを作ったり、法人契約プランを新しく作りました。Reno801をさらに展開させていくためにも、これからも新しい切り口で集客していこうと考えています。
Reno Beauty株式会社
代表取締役
田中誠太朗さん
美容の専門学校を卒業後、20歳で上京し、表参道のカリスマサロンに入社。2010年、国内最大級サロン(六本木)の立ち上げに参加。2017年5月、プライベート型会員制ビューティーサロン『Reno 801』を広尾にオープン。観月ありさ、鈴木伸之ほか多くの俳優やアーティストのヘアメイクも手がける。
Reno801
http://reno801.jp/
RenoBeauty
http://renobeauty.jp/
オフィシャルサイト
http://seitarotanaka.com/