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オムニチャネルの必然性―消費者が求める購買体験

「オムニチャネル」という言葉は、2011年にアメリカで用いられるようになり、日本でも2012年頃から目にするようになりました。特に、スマートフォンの登場によりオムニチャネルの機運は高まっていますが、日本ではオムニチャネルを実現できているところはまだまだ少ないのが現状のように見受けられます。そこで今回は改めて、オムニチャネルについてお伝えします。

オムニチャネルとは?

オムニチャネル小売り(Omni-Channel Retailing)の”omni” は「全ての」「総」といった意味の接頭辞です。オムニチャネルは、実店舗やEC、カタログなど、全ての販路を統合して、いずれのチャネルからでも同様のサービスを受けたり、商品の購入ができたりする仕組みのことを指します。
 似たような「~チャネル」とつく言葉が複数あるので、そちらについて簡単に説明した上で、よりオムニチャネルについてご説明します。

シングルチャネル

 もっともシンプルなモデルがこの「シングルチャネル」です。顧客に対して、提供する販売チャネルは1つのみ。そのため、顧客との接点が1つのみとシンプルな構造です

マルチチャネル

 1つの販売チャネルしか持たないシングルチャネルに対して、複数の販売チャネルを持つモデルが「マルチチャネル」です。
 購入者が、店舗でも購入するし、ECでも購入するというように、「購入者自身でその都度、購入チャネルを選択できるように、複数の販売チャネルを提供して、顧客と複数の接点を持とう」というものです。

クロスチャネル

 クロスチャネルは、マルチチャネル同様、複数のチャネルを持ちます。しかし、マルチチャネルは複数の販売チャネルがそれぞれ独立しているのに対して、クロスチャネルはそれぞれの販売チャネルがクロスするのが特徴です。マルチチャネルの場合は、店頭で購入した場合は店頭で完結、ECで購入したものはECで、とそれぞれの販売チャネル内で完結していました。
 しかし、クロスチャネルの場合は、ECで購入したものを店頭で受け取る、といった店頭受取のように、それぞれのチャネルが交わります。ですので、マルチチャネルよりも高次元の仕組みとなります。

オムニチャネル

 オムニチャネルも複数のチャネルを持ち、かつ、それぞれのチャネルがクロスするために、クロスチャネルと混同しがちかもしれませんが、オムニチャネルはクロスチャネルの発展形、更に上位の仕組み・概念です。では、どこに差異があるのかというと、「顧客体験(カスタマー・エクスペリエンス)」です。
 ECでも店頭でも、その他のチャネル全てで、どのチャネルを選択しても、同じように商品情報を確認できたり購入ができたりと、顧客がストレスなく同一の体験が出来ることが、オムニチャネルのキーポイントです。
 チャネルを問わずに一貫して同質の体験を提供するためには、商品の品揃えや在庫情報、配送、購買データ、顧客データ等が統一で管理されている必要があります。
 例えばECで購入経験のあるAさんが実店舗に訪れた際に、ECでの購入履歴が店頭で参照され、店員はその情報を踏まえて同じラインの商品を勧め、Aさんは新たに商品を店頭で購入する。
 こういった体験は、顧客一人ひとりの情報がチャネルにかかわらず共有・統一されていることで実現されます。

変わる購買行動

 冒頭で、「オムニチャネルの機運はスマートフォンの登場により高まっている」と述べましたが、スマートフォンの登場は消費者の購買行動にも大きな変革をもたらしました。

・気になる商品を見つけたら、SNSで検索し、使用した感想やレビューを探す。
・メーカーサイトでスペックを確認する。
・複数の販売サイトで値段を比較して購入する。

 今はこれらの行動は当たり前ですが、以前には考えられないことでした。スマートフォンとインターネットの普及により、急速に購買行動にも変化が生じています。そして、消費者は購買行動の変化に伴って、売り手側にも変化を求めています。
今までのどおりの販売スタイルでは最早満足ができず、EC、同様の購買体験が出来ることを求めるのです。
 そのため、オムニチャネルの実現は販売者側としては、必然かつ急務といえるでしょう。

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