How to クラウドファンディング
- 2018/4/25
- つくる
- bragoku編集部
はじめに
思いついたアイデアを具現化したいときや挑戦したいことができたとき、それを実行に移す際にまずぶつかる壁が資金調達ではないでしょうか? 具現化できる斬新なアイデアやプロジェクトが結局は企画止まりで終わってしまう。そんな経験をしたことがある人も多いと思います。しかし、それも昔の話、今はインターネットを使って資金援助を呼びかけることができる「クラウドファンディング」によって数多くのアイデアやプロジェクトが産声をあげています。ここではそんな「クラウドファンディング」についてご説明します。
クラウドファンディングとは
クラウドファンディング(Crowdfunding)は、群衆(crowd)と資金調達(funding)を掛け合わせた造語で、インターネット上で不特定多数の人から資金調達する仕組みのことです。
個人、企業、団体、自治体などが、「モノを作りたい」、「イベントを開催したい」、「PR・宣伝をしたい」など、ある目的のためにプロジェクトを立ち上げます。そこで必要な資金を、プロジェクトに共感した人がインターネットを通じて出資し支援します。
クラウドファンディングのサイト運営会社も、マクアケ(Makuake)、キャンプファイヤー(CAMPFIRE)、レディーフォー(Readyfor)など数多くあり、誰でも気軽に利用できるようになりました。2016年には元お笑いコンビ・キングコングの西野亮廣さんがクラウドファンディングを利用して絵本「えんとつ町のプペル」を出版し大きな話題となりました。
クラウドファンディングの流れ
クラウドファンディングを成功させるためには、企画などの準備、ページ作成、プロジェクト公開などやるべきことがたくさんあります。準備からプロジェクト成功までの一連の流れを紹介しますので理解しておきましょう。
クラウドファンディングのメリット、デメリット
近年、誰でも気軽にクラウドファンディングを実行できるようになり、出資額が1,000万円を越えるプロジェクトも多くなってきています。当然プロジェクトに必要な資金を出資してもらうという大きなメリットがあることから多くの方が利用するのですが、デメリットがあることも知っておく必要があります。メリット、デメリットをきちんと理解した上で利用することが大切です。
クラウドファンディングを実施する際には、支援金に対するリターン方式として「All or Nothing方式」と「All in方式」の2つのパターンがあります。どちらも共通しているのは、メリットとして需要調査(テストマーケティング)ができる、在庫リスクの軽減などが挙げられます。逆にデメリットとしてはプロジェクトが失敗した場合でもサイト上に結果が残ってしまうこと、アイデアが盗まれてしまう可能性があることなどが挙げられます。
All or Nothing方式
期限内に目標金額に達しない場合、集まった資金を受け取ることはできません。例えば2カ月で目標金額100万円と設定した場合、99万円まで集まっていても期間内に100万円集まらなければ1円も受け取ることができずプロジェクトは終了となります。その場合、プロジェクト企画者はリターンを実施する必要はありません。また支援者には支援金がすべて返金されますし手数料も発生しません。
そのため、アプリ開発など達成できなくても損失のないものや在庫を抱えなくてすむ商品などに向いています。
All or Nothing方式
目標金額に達しなくても、それまで集まった資金を受け取ることができます。例えば目標金額100万円で50万円まで集まっていれば、その50万円を受け取ることができます。プロジェクトは実行され、支援者に対してもリターンが必ず行われます。しかし支援者の人数が少ない場合、実施した際のコスト、リターンに対するコストが高くなってしまうことがあります。
そのため、映画の宣伝やアパレルなど、すでに実行が確約されている、もしくは集まった金額に関わらず実行が可能なプロジェクトに向いています。
クラウドファンディングの歴史
クラウドファンディングという言葉自体は比較的新しいもので、2001年にアメリカの「ArtistShare」がクラウドファンディングの運営を開始したのが始まりと言われています。日本では2011年の東日本大震災をきっかけに、復興目的のクラウドファンディングが広まったと言われています。しかし、クラウドファンディングという言葉ができる前から、その原型ともいえる大勢の人たちからお金を集める仕組みは考えられていました。
例えば、1951年の「プロ野球・広島東洋カープのたる募金」や1181年の「奈良の東大寺・大仏の修復・再建」などは、現在のクラウドファンディングと同じような仕組みで資金を調達しました。
広島東洋カープの「たる募金」
球団設立2年目の1951年。初年度を最下位で終え早くも経営難に陥った球団は、2軍を解散し約20名の選手・コーチを解雇しますが、さらに他球団との合併話が持ち上がります。球団の資金難を救うべく石本秀一監督が広島県庁前で資金集めの後援会構想を発表。老若男女問わず広島市民が募金を始めるなか、地元紙・中国新聞の野球部員が試合を見に来た人に募金してもらおうと、広島総合球場の正面入り口に2つの樽を置きました。結果、目標金額の400万円を突破し、球団消滅の危機を乗り越えました。60年以上経った現在も広島市民に愛される球団として存続しています。この「たる募金」は、その後も2004年の新球場設立の時、2011年の東日本大震災の義援金を募る時に行われました。
東大寺と大仏
1180年、源平の争乱で東大寺と大仏が焼失します。翌1181年、大勧進職に任命された僧の重源(ちょうげん)が、後白河法皇の支援を受け、修復・再建するために全国各地を回り勧進活動(寺社・仏像の建立・修繕などのために寄付を募ること)を行い資金を集めました。1195年には大仏殿の再建を実現させたといいます。
資金を募るためには、プロジェクトに対して「いかに多くの人から共感を得られるかが大事」ということは今も昔も変わりません。しかしインターネットが普及した現在のクラウドファンディングでは、興味を引くタイトルの付け方や写真や動画を使った記事の見せ方、SNSを活用したプロモーションなどが大切になってきます。
クラウドファンディングの種類&サイトの紹介
クラウドファンディングには、大きく分けて「寄付型」、「購入型」、「投資型」の3つがあります。この中で「寄付型」と「購入型」についてはよく知られていると思います。それぞれ特徴がありますので、自分が実行するロジェクトにはどのタイプが合っているのか把握したうえで選択しましょう。
寄付型
その名の通り、集めた資金を全額寄付にあてるため、商品やサービスなどのリターンがないタイプ。商品の制作やサービスの提供などが多く、これに特化したサイトはレディーフォー(Readyfor)などがあります。
購入型
リターンにお金は発生しません。物やサービス、権利という形での特典を受け取るタイプ。復興支援や社会的意義の大きいものが多く、ここに特化したサイトはキャンプファイヤー(CAMPFIRE)やマクアケ(Makuake)などがあります。
投資型
ソーシャルレンディングとも言われており、融資という形で企業や事業主に投資することで、金利という形でリターンを受け取るタイプ。不動産投資や海外投資があり、ここに特化したサイトはクラウドバンク(Crowd Bank)などがあります。
クラウドファンディング成功事例
ここまでクラウドファンディングについて説明してきましたが、全体像はイメージできたでしょうか。ここでは個人、企業、団体、自治体などがクラウドファンディングを利用してさまざまなプロジェクトを立ち上げている中で成功した事例を紹介します。
成功事例 1 絵本「えんとつ町のプペル」
絵本作家としての顔も持つ元お笑いコンビ・キングコングの西野亮廣さんが、4冊目の絵本を作るときにクラウドファンディングを利用しました。通常、絵本は作家が一人で作るものですが、カメラ担当、背景担当、色塗り担当など分業制になっている映画やドラマ、漫画と同じように、日本にいる世界トップレベルのイラストレーターたちと組んで完全分業制で一冊の絵本を作ろうと考え、その制作費をクラウドファンディングで募りました。結果、目標額600万円に対して1,000万円を越える支援が集まりました。
また、第2弾として行った「個展『えんとつ町のプペル個展』を入場無料で開催したい」は目標額180万円に対して4,600万円を越える支援が集まりました。
成功事例 2 アニメ映画「この世界の片隅に」
劇場用アニメ映画「この世界の片隅に」の公開実現に向けてクラウドファンディングを利用。準備期間に4年を費やし、シナリオと絵コンテが完成しましたが、製作スタッフの確保やパイロットフィルムの制作のための資金を募りました。開始1日で800万円、8日後には2,000万円を突破。最終的には目標金額2,160万円に対し、3,900万円を越える支援が集まりました。その後、映画は大ヒットし大きな話題となりました。
そして第2弾となる「海外上映を盛り上げるため片淵監督を現地に送り出したい」では、プロジェクト開始からわずか11時間で目標金額の1,080万円を達成し、最終的には3,200万円を越える支援が集まりました。
成功事例 3 「小児がんと闘う子どもたちのために不足する無菌室を作る」
国立成育医療研究センター小児がんセンター長の松本公一さんは、感染を防ぐために綺麗な空気の中で過ごせる無菌室(クリーンルーム)を使って治療する子どもたちに対応するため、クラウドファンディングを利用して無菌室を作る資金を募りました。一つの無菌室空間を作るためには2,500万~5,000万円程度の費用が掛かりますが、その第一ステップとして目標金額を1,500万円に設定。1,800人以上の支援者から3,100万円を越える資金が集まりました。
ここに挙げた以外にも成功事例は無数にあります。目標額の大小に関わらず、さまざまな成功事例を見ることでプロジェクトを達成するために学ぶべきことや参考になることがありますのでチェックしてみてください。
最後に
「クラウドファンディング」により個人のアイデアが具現化できる時代がやってきました。あなたの考えたアイデアやプロジェクトに日本国内はもちろん、世界中の人々から共感が集まり、具現化していくまでの過程はなんとも言えないワクワク感をもたらしてくれます。今あなたの中に眠っているアイデアをクラウドファンディングを通して具現化してみてはいかがでしょうか。