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【第14回】教えて!阿部博士 -これからのサプリメントはどう変化していくか –

すでに日本語として市民権を得ている感がありますが、サプリメントを日本語に直訳すると“栄養補助食品”です。この「栄養の補助」というところがポイントで、言葉上は不足しがちな栄養素を補うための食品がサプリメントということになります。
不足しがちな栄養素というと、やはりビタミンやミネラルあたりでしょうか。確かに、「1本で1日分のビタミン」とか「1日分のミネラル」のような表示をよく見かけますが、この『1日分』とはどのようにして算出されているのか。これには明確な解があり、主に厚生労働省が発表する「日本人の食事摂取基準」に記載の目安量または推奨量を基準にしています。これは従来までのサプリメントを摂取する目的基準にしかすぎないと私は考えています。換言して平成までのサプリメントスタンダードとしましょう。成分にもよりますが、目安量を基準にした摂取量では摂取者が満足できなくなるだろうという見解です。これからのサプリメントは、目的や願望に合わせて消費者が選び、その目的を達成させて満足させるべきだと考えます。

根拠として、まず摂取目安量や推奨量の基準についてですが、これは健康を維持するための最低限度の量になっています。例えばビタミンC。成人の場合、1日当たりの推定必要平均量は85mg、摂取目安量は100mgです。但し書きとして、『推定平均必要量は、壊血病の回避ではなく、心臓血管系の疾病予防効果並びに抗酸化作用効果から算定』とされています。つまり「ビタミンCを摂って美白」、「ビタミンCのお陰で肌のハリツヤが良くなる」など、多くの方が期待する効果を得るためには目安量の摂取では足りないことになります。今の基準に沿って摂っていても「大きな病気を患わなかったのはサプリメントのお陰かな? 実際のところは分からないけど」という程度の体感(感じられるかは分かりませんが)になる訳です。

もう一つはサプリメントの摂取目的の変化についてです。従来の栄養を補う時代から目的に合わせて必要な成分を摂取する時代に変化していると思います。また、サプリメントに含まれる栄養の概念も単なる栄養素から健康成分や美容成分など幅広く変化してきています。コラーゲン、ヒアルロン酸、プラセンタエキスなど美容成分配合のサプリメントを摂取している方は多いのではないでしょうか。これらの成分原料の多くは、今のところ明快な摂取目安量というものがありません。参考にするなら機能性表示食品に表示されている1日当たりの目安量ですが、表示できる機能に制約が多いため目的を網羅できるわけではありません。例えばコラーゲンサプリメントの場合、コラーゲンをどれだけ摂ったら翌朝肌に張りがでるかは、コラーゲンの製法やサプリメントの剤形に左右される部分もありますが、考えられる解は、

①どれだけ摂取しても、そのような効果は得られない
②一度に〇g、寝る前に摂取すれば体感が得られる
③〇gを1日数回に分けて摂取するだけで体感が得られる

以上の3通りです。
当然①のようなサプリメントは消費者の支持を得られず淘汰されていきます。おそらく③のようなサプリメントが消費者の理想だと思います。そして開発者も③になるような設計や素材選びをしていかなければいけません。
似たようなサプリメントが数多く売られている中で、開発者には消費者の願望の数だけ素材を見つけ出し、目安摂取量を計測し、より効果的な剤形を工夫することが求められます。また、1つの願望が叶うと、さらに求めようとするのが人間というもの。欲しいサプリメントが増えていきます。体感が信頼に繋がり、そこからそのブランドの新しいサプリメントを欲するという循環が生まれると思います。

令和の時代は、サプリメントを「足りないから摂る」から「願望を叶えるために摂る」に変わっていくでしょう。

阿部哲朗

阿部哲朗

投稿者プロフィール

・医療美容研究所 所長 / 博士(創薬科学)
・1979年6月26日生まれ、北海道出身。
・鹿児島大学理学部生命化学科卒業。
・北海道大学大学院生命科学院生命医薬科学コース修士課程修了。
・2018年3月、金沢大学大学院医薬保健学総合研究科創薬科学専攻博士後期課程修了。
 研究テーマは「植物に由来する健康機能性成分の探索」。
・趣味:将棋(四段)、スポーツ観戦 etc
・好きな言葉:①僕の前に道はない(道程より)
       ②人生=修行ナリ(S.O.W. センスオブワンダーより)

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