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【第10回】教えて!阿部博士 – 商品の効果効能はエビデンスが重要? ~薬機法・景表法を考える~ –

2019年3月に入り、消費者庁から複数の商品に対し景表法に基づく措置命令が出されています。(参照:景品表示法関連報道発表資料 2018年度)

内容をみると、業界関係者なら「当たり前だよね」と思うことですが、実際の効果効能はとなると簡単に断定することは難しい……、ルールと効果は別で考えなければいけない部分があります。
景表法の適応範囲はかなり広いですが、殊に物販に限った解釈をすると『本質以上によく見せて、またはお得に見せて売ってはいけませんよ』という規則です。ですので、広告の根拠となり得るエビデンスがしっかりしていれば違反の対象にはなりません。

まずここで第1クエスチョン!

エビデンスがあったら効果があるの?

ある商品を購入した後で「いっぱいデータが紹介されているけど、全然効かないから買うのやめよう」と思った経験はないでしょうか。
素材ベースで考えると、化粧品であっても健康食品であっても、場合によっては雑貨であっても恐らく何かしらの効果があって配合しているでしょう。しかし最終製品での回答は以下のようになると考えます。

A.用法容量及び対象者、目的により効果が出ない場合も多い。
  しかし、全く期待できないことはない。

これは過去の当コラムでも書きましたが、素材が濃度に依存する場合、配合量に依存する場合、使用頻度に依存する場合といった使用方法や、効果が出た割合が何パーセントかなど複合的な要素が相まっているためです。例えばビタミンが不足がちな食生活を送っている方がマルチビタミンなどのサプリメントを摂取すると何らかの体感が得られますが、充分足りている方が摂取しても体感は何も変わりません。
エビデンスは重要ですし、新規で素材を発見(開発)する場合にはまずエビデンスを取りに行きます。細かく突っ込むと試験管内における細胞培養試験と小動物を使った生体試験の結果には大きな隔たりがあったりします。
以上のことから、一般論として素材のエビデンスは効果効能を図るうえでの参考情報であり保証まではしかねると判断します。もっとも、エビデンスが意図的に作られていたりデータに改竄があったりすることは論外ですので、エビデンスを見る際に疑ってかかる必要もあります。
データがあっても効かない場合があることは理解いただけたと思います。この場合、根拠となるデータがあるので景表法には違反しません。……と自信を持って言いたいのですが、違反事例が絶えない理由は、このエビデンスに疑義が生じるからです。

そこで第2クエスチョン!

エビデンスが根拠として認められなければ効果は無い?

根拠資料を提出してもそれが認められないために景表法違反となるケースがほとんどです。
「あの商品、効果が無かったんだって。騙されたみたい」「詐欺商品……」
何か違反があると消費者の印象は最悪になります。ではエビデンスが認められなかったものは本当に効果の無いか、となると難しい。

A.エビデンスが不確かであれば、効果があるとは言い切れない。
  しかし効果が全くないとは言い切れない。

歯切れが悪くなりますが、効果の有無どちらの可能性もあります。
例えば、利用者100人中10人の身長が平均5㎝伸びた素材があったとします。前提としてこのデータに誤りはありません。10人は効果的な素材と思い、残り90人は効果が無いと思うでしょう。広告表現では「平均5㎝アップ!」みたいになるでしょうか。この場合、データはありますが、景表法上は「情報が不確かなうちは標榜してはいけない」ので恐らく違反に問われます。しかし全く効果が無かった訳ではありません。データの整合性を考える際に有意差を調べたりしますが、「有意水準が低い結果をどう捉えるか」は学術的・商業的・法規制的観点それぞれで異なると思います。ただ、消費者からするとその立場の違いを知る由もないので「景表法違反=メーカーが嘘をついていた」と直線的判断をします。本来であれば、「どの情報が正しくてどの情報が誤りか」「データの読み方」等の消費者教育が必要なのかもしれませんが、最大多数の最大幸福を考えるとメーカー側がやれるだけの事をやる必要があるでしょう。
ということで、一般消費者に対しては「エビデンスが無いからと言って効果が全く無いとは言い切れない」、メーカーとしては「根拠として疑義がかからないレベルのエビデンスを構築する」両方向の努力が必要であると考えます。

ここで新たなクエスチョン!

先ほどの例示にあった身長が伸びるサプリメントは
薬にならないの?

A.薬であるべきで食品としては認められない。
  「しかし」のような補足や例外もない。あえて言えば
  『景表法で議論されることではない』。

身長が伸びる効果については薬機法によって制限されます。薬機法についても「薬機法に違反していた=薬効は無かった」とは言い切れません。薬機上の考え方について景表法よりも複雑になりますので、続きは来月に。

阿部哲朗

阿部哲朗

投稿者プロフィール

・医療美容研究所 所長 / 博士(創薬科学)
・1979年6月26日生まれ、北海道出身。
・鹿児島大学理学部生命化学科卒業。
・北海道大学大学院生命科学院生命医薬科学コース修士課程修了。
・2018年3月、金沢大学大学院医薬保健学総合研究科創薬科学専攻博士後期課程修了。
 研究テーマは「植物に由来する健康機能性成分の探索」。
・趣味:将棋(四段)、スポーツ観戦 etc
・好きな言葉:①僕の前に道はない(道程より)
       ②人生=修行ナリ(S.O.W. センスオブワンダーより)

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