fbpx

【第7回】教えて!阿部博士 – 保湿ケアの重要性 –

先週末(12月1日・2日)は皮膚科学会東京支部会に参加してきました。美容皮膚科学会とは異なり、議題のメインは「腫瘍や紅斑・アレルギーについて」です。アレルギーが食物感作ではなく、皮膚を通した感作(経皮感作)によって発現すると考えられて久しいですが、一般にはまだまだ認知されていないように思います。一昨年のアレルギー学会で、幼児期の保湿ケアはアレルギーを予防する旨の講演を聞いていたので、自分にとって今回はその情報のアップデートになりました。

今まで把握していたことの要約

●肌のバリア機能が低下するとアレルギー感作を起こしやすい
●乳幼児期は肌のバリア機能が充分に形成されていない
●充分な保湿ケアによりアトピーの軽減やアレルギーが予防される

言葉として認識していてもメカニズムが不明であったり、実感を含めた経験がないと、なかなかすんなり頭に入っていきません。加えて周囲に経皮感作について説明しても信じて頂けないことが多々ありました。また、「保湿はスキンケアの基本の基」と言われていますが、こちらに関してもナゼナニを上手く説明できないことがあります。
結局、実感の伴わない状況で、「保湿ケアがバリア機能を修復し、アレルギーを予防します」みたいな表現をするわけです。これでもかなり要約されていますが、さらに省略すると「保湿ケアがアレルギーを予防します」となり、なかなか相手にされません。

まず、「バリア機能」について。
何をバリアするのか。これについては、
①体内からの水分の蒸発
②外部からの有害物質の体内侵入
と答えが出ます。しかし、有害物質なのか有効物質なのかの選択性について未解明な部分があります。即ち「バリア機能を高めすぎると有効成分さえも浸透しないのでは?」と、新たな疑問が出てきます。

次に「アレルギーの予防」について。
改善ではなくて予防なので、仮にアレルギー症状が起こっても予防した結果軽度で済んだのか、予防できていなかったかの区別がつきません。(かかる人はかかります)

最後に「保湿ケアがバリア機能を修復する」について。
逆の事象として「乾燥がバリア機能を低下させる」ことが知られているので、細かい仕組みははっきりとしませんが、これは正しいと思います。ここまでが、今までの知識です。

今回のアップデート

●皮膚の炎症とバリア機能の低下とアレルギー応答は悪循環する
ここでの悪循環とは、
・炎症部位ではバリア機能が低下している(炎症のある部位に化粧品を使ってはいけない理由)。
・バリア機能が低下している状態は、アレルギー感作が強くなる。
・アレルギー感作が強い状態は炎症が起きやすくなる。
・バリア機能が低下していると、炎症が起きやすくなる。

炎症を抑えることが一番重要ではありますが、同時にバリア機能も修復(保湿)しないとすぐに炎症を繰り返すことになります。

●経皮感作はアレルギー、食物感作は免疫応答に繋がる
経皮感作と食物吸収については、ピーナッツ油についてのコホート研究※をもとに説明されていました。最近の舌下療法などからも食物感作とアレルギーの改善は期待できると思います。

※離乳食時の早くからピーナッツを食べていた方がピーナッツを食べさせなかった群に比べてピーナッツアレルギーの罹患率が低かった

今回の考察

●バリア機能を維持できれば、シミも予防できる可能性がある
考察については私の期待論になりますが、シミができるメカニズムには「プロスタグランジン」や「エンドセリン」と呼ばれる炎症性の伝達物質(サイトカイン)が関与しています。バリア機能を高めることで伝達物質の産生が抑えられればシミができにくくなるのではないでしょうか。今回の学会ではその他のサイトカインとの相関については発表があったのですが、試験条件の縛りが大きくなるためか、残念ながらこの仮説(プロスタグランジンやエンドセリン)を示すまたは否定する報告が今のところありませんので、あくまでも期待的観測です。

●しっかり保湿していれば、シワも予防できる可能性がある
保湿とシワの相関ですが、保湿により乾燥によるコジワが改善されることは既に知られています。深いシワに関してはコラーゲンの変性と減少や表皮と真皮のズレが関与しています。コラーゲンの変性・減少の遠因には紫外線ダメージがあるのですが、丹念な保湿ケアは紫外線ダメージを緩和するのではないかと期待しています。また、保湿ケアにより乾燥を改善するので全体的なシワ予防に繋がるのではないでしょうか。

もっと細かい内容についても勉強してきたのですが、ある程度説明しやすい部分についてのみコラムで取り上げさせて頂きました。
今回の学会では保湿ケアの重要性について、今までの知識を補足するような形で細部のメカニズムの一旦をアップデートできたと思います。まだまだアウトプット不足ですのでこちらはまた別の課題ですけどね。

阿部哲朗

阿部哲朗

投稿者プロフィール

・医療美容研究所 所長 / 博士(創薬科学)
・1979年6月26日生まれ、北海道出身。
・鹿児島大学理学部生命化学科卒業。
・北海道大学大学院生命科学院生命医薬科学コース修士課程修了。
・2018年3月、金沢大学大学院医薬保健学総合研究科創薬科学専攻博士後期課程修了。
 研究テーマは「植物に由来する健康機能性成分の探索」。
・趣味:将棋(四段)、スポーツ観戦 etc
・好きな言葉:①僕の前に道はない(道程より)
       ②人生=修行ナリ(S.O.W. センスオブワンダーより)

この著者の最新の記事

関連記事

ピックアップ記事

  1. ブランド創出の極意(ブラゴク)の『作る』カテゴリの記事 How to クラウドファンディングの メインビジュアル クラウドファンディングのプロセスを絵で表現

    2018-4-25

    How to クラウドファンディング

ブランド創出の極意 Facebook

ページ上部へ戻る