手軽に購入でき、さまざまな料理に使われるツナ缶ですが、モンマルシェ株式会社では希少部位のみで作られた価格5,400円(税込)という高級ツナ缶「マグロトロ ブラックレーベル」を発売。現在、予約待ちの人気商品になっています。商品開発のキッカケや思いについて、通販・直営店 営業部部長の河野雄士さんにお話を伺いました。
モンマルシェ株式会社 通販・直営店 営業部部長 河野雄士さん
━━なぜ、一缶5,400円の高級ツナ缶「マグロトロ ブラックレーベル」を作ろうと思ったのですか?
河野 ツナ缶は、1929年に当社の前身である清水食品という会社が日本で初めて作ったんです。ツナ缶を作るには、血合いや骨の取り除きなど、職人の技術が必要ですが、最近はAI化や採算性がクローズアップされて機械化しています。しかし、職人が70歳を超えて、後継者がいなくなっている中で、その技術を後世に残していくために「マグロトロ ブラックレーベル」を開発しました。
━━販売戦略として高級なツナ缶を作ったわけではないんですね。
河野 違います。一般的なツナと若干違い、「マグロトロ ブラックレーベル」はビンチョウマグロの中で1%しかない希少部位の大トロの部分を使っているので、どうしても値段が高くなります。また、オリーブオイルもスペイン産のブラックレーベルというものを使っており、これも5,400円という価格になった理由の一つです。ですから高級なものを作ろうというより、いろいろこだわった結果、価格を5,400円にせざるを得なかったんです。
━━スーパーなどで安価で売っているツナ缶を5,400円で販売することに、社内から反対の声はありませんでしたか?
河野 100人いたら99人は、「少しやり過ぎだ」とか、「こんな高いもの売れるはずがない」といった意見でしたね。実は他商品と比べると利益率は高くありませんが、ツナ缶作りの技術を後世に残しておきたいという思いで作ったので、たくさん販売して利益を出そうということを考えずに発売した商品です。それよりも、どんどん安価な商品が出てきて、今や主役になれない存在になりつつあるツナ缶を主役として残すことが重要だという会社の方針があったわけです。
素材と職人の技術にこだわった「マグロトロ ブラックレーベル」
━━さまざまなこだわりを持って作られた商品ですが、開発に当たり、苦労した点はありますか?
河野 素材を大トロにしたことで通常の商品と差別化はできましたが、正直オリーブオイルが一番難しかったですね。オリーブオイルのツナはレギュラータイプなので、同じものを使うと味が似通ってしまいます。オリーブオイルは濃厚なものが一般的なので、こだわったものを使っていく場合にどうするか試行錯誤をしました。また、コスト増という面では、大トロは一尾で1%ですが、これは一缶を作れるかどうかという量です。さらに、魚によっては使えないものもあるので、実質的に三尾で一缶ぐらいしか作れませんでした。また、「マグロトロ ブラックレーベル」を作っている3人の職人が自信を持って出せるものしか使わないため、魚の硬さなどから価格に見合うものを選んでいくと、使える魚はごくわずかになってしまいます。普通なら1カ月で100缶程度作れるところ、「マグロトロ ブラックレーベル」は30缶程度。しかし、それで良いというスタンスでやっています。
━━他のツナ缶とは製造工程も異なるのですか?
河野 共通部分は多いですね。ツナ缶はマグロの頭と尻尾を切断したものを蒸します。その後に骨や血合いの箇所を取り除いて缶に詰め、もう一度加熱します。しかし大トロを使用するときは、蒸し作業の工程から大トロの部分を分けて蒸します。ただ通常は1尾40kg程なのに対して、大トロの部分だけだと1%の400g程度。量が違いますし、肉質も異なるという部分は大きな違いですね。
━━素材や技術以外に、こだわったところはありますか?
河野 職人の技術を後世に残したいという思いを伝えるために、LPやパッケージにはこだわりました。ギャグみたいですが、缶なので五感に訴えるような形にしたいなと思いました。例えば、触覚なら箱の材質、嗅覚なら缶を開けたときのオリーブオイルの匂い、視覚なら期待感が持てるパッケージにするなど五感に訴え、なおかつ感動させられるようにというコンセプトで作っています。そして、これはLPは全般に言えることですが、やはり言葉ではなく、写真や動きでお客様に伝えることをメインに考えています。語りたいことはたくさんありますが、文字が多くなってしまうとプロダクトアウトになってしまうので、限りなく言葉を減らしています。
━━5,400円で販売するにあたり、どの層をターゲットにされたのですか?
河野 ターゲット層というよりも、食べるシーンをある程度決めました。ツナ缶は料理に使われることが多いですが、「マグロトロ ブラックレーベル」は、そのまま食べてほしいと思っています。例えば、ワインを飲みながら嗜んだり、記念日にご夫婦で食べたりするシーンを想定していました。缶詰には、缶の中で熟成させる缶熟という言葉があります。1年熟成、2年熟成すると、味が変わって美味しくなるんですので、1年寝かせて、その人にとって特別なシーンで食べていただきたいということを想像していました。
━━販売に向けて、どのようなプロモーションを行いましたか?
河野 特にPRは行っていません。ただプレスリリースを見て、多くのメディアから取材が入りました。通常タイプのツナ缶は、競合他社にない商品や、市場ニーズがあるものなど新訴求をしています。しかし、「マグロトロ ブラックレーベル」に関しては、大々的にPRして商品展開していくことは当初から考えていませんでした。
━━販売開始後の売れ行きはいかがでしたか?
河野 1カ月に30缶しか作れないので、発売日に向けて200~300缶を作ってリリースする形にしました。この300缶は2カ月間で完売しています。これは想定外でしたね。完売後、2回目の販売に向けて200缶ほど作りましたが、販売当日に完売しました。
2019年8月にオープンした日本橋三越本店
━━発売後、お客様からの反応はいかがですか?
河野 リピートされる方が多いです。最初は自分で食べるために購入されて、次は贈り物に購入いただくケースが多いですね。年齢層はさまざまで、清水本店は年齢層が高く、お客様の層は50代より上が多数。ただ、オンラインショップは20~60代まで幅広いです。自宅用というより、結婚式の二次会のギフトなど、利用シーンが多岐にわたるので、そういう背景があるのかなと思います。
━━現在は予約待ちになるほどのヒット商品になりましたが、要因は何だと思われますか?
河野 最初のコンセプトからブレずにやってきたことではないでしょうか。売れる売れないというより、これを知ってもらいたいということを成果とする。その思いを的確に伝えられ、メディアにも同じように伝えてこられたからだと思います。
フレークタイプ、リゾットタイプのツナ缶など、人気商品を多数取り揃えています。
━━最後に、今後の展開について教えてください。
河野 フレーバー系は増やそうと思っています。例えばツナだけでなくサバもありますが、そういうジャンルを増やしていっても良いかなと。そして缶詰専門店ではなくツナ缶専門店として、「缶詰と言えばモンマルシェ」「ツナ缶と言えばモンマルシェ」みたいにしていきいと考えています。また、会社としては「野菜Motto!!」のブランドも伸ばしていきたいと思っています。
モンマルシェ株式会社
静岡市清水区本町1番7号TEL:054-352-5515
URL:https://shop.mon-marche.jp/https://yasaiwomotto.jp/
撮影:坂本 康太郎
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2018-4-25
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