前回、広告表現は景表法や薬機法に制限されているため、エビデンスが無いと景表法違反、あったとしても薬機法違反になること。結果として様々な制約から実際の効果を伝えることが難しいことについて、主に景表法の観点から述べさせていただきました。
今回は前回の続きです。
「身長が伸びるサプリメント」について薬機法上の問題点からスタートします。
薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)の中で、広告に限って解釈すると『薬や医療機器ではないものを、あたかも薬や医療機器に見せかけて集客してはいけませんよ』という法律です。薬と食品や化粧品のボーダーラインについては細かく定められていますが、大まかには下記のようになります。
化粧品でも食品でも例外はありますが、私が校正を行う際には厳密なルールはひとまず保留し、上記のボーダーラインに則り「これって薬だよね」と思わせるものは問答無用でアウトとしています。
よって前回に引き続き、テーマとした「身長が伸びるサプリメント」はアウト。
他にもサプリメントは食品に分類されますので、
- 髪の毛が生える
- 飲むだけで痩せる
- 胸が膨らむ
- シワが消える
これらの効果は仮にエビデンスがあってもアウトです。
化粧品の場合は
- 肌が白くなる
- シワが改善する
- シミが消える
- ターンオーバーが促進する
- 白髪が黒くなる
- 髪が生える
これらの表現はアウトです。(他にも多々ありますが……)
また、「細胞を蘇らせる」や「若返る」辺りはサプリメントでも化粧品でもアウト。
しかし、このうちの1つくらいは「欲しいーーっ」と思いませんか?
ニーズのありそうな効果は、ほぼ全て薬機違反になるということが現実です。
「じゃあ本当は効果が無いものを買ってしまったの?」
というクエスチョンが沸き起こるのですが、
A.違反に対して効果の有無は関係ない。エビデンスがしっかりしていれば効果があるかもしれない。また経験的に効果が期待できる場合もある。
逆方向のクエスチョンもあります。
「何で効果があるのに言っちゃいけないの?」
A.言ってはいけないことがルールだから。以上!
……と書くとルールが悪いように見えますが、さにあらず。「言いたいのであれば所定の手続きを取って医薬品としての認可を受けてください」ということが薬機法の本質的な部分です。作用機序が求められたり過剰摂取時の安全性試験や安定性試験など大量のデータが必要となりますが、正当な手続きを踏まえれば言えるのが薬機法です。多くの場合はそこまで踏み込んだ試験ができないので「粛々とルールの中で売ってください」となる訳ですが。
それでは「どうせ言えないのだったらエビデンスをとる必要が無い」という考え方があっても不思議ではありません。しかしこれは8割方は誤りであると考えます。確かに集客だけを考えるとエビデンスは公表できないものかもしれません。しかし展示会、学会、自社セミナーなどエビデンスを発表する場は色々とあります。即ち、エビデンスは集客には直接使えないが確かな製品を作り上げるためには重要なファクターになります。
そういった意味ではエビデンスが縁の下の力持ちになるでしょう。
以上、前回と今回の内容をまとめると
エビデンスは製品を育てる上で重要。関連法規上は、エビデンスが無い場合は景表法違反の可能性が高まり、あったとしても薬機法上使えない場合がある。しかし、エビデンスを活用する場は存在する――となります。
余談ですが、現在景表法違反では違反期間に売り上げた金額の3%が課徴金として徴収され、今後は薬機違反でも課徴金が発生することになりました。前例がまだないので分かりませんが、ダブルで課徴金みたいなことも出てくるのでしょうか。個人的には、罰則が緩すぎるので、その他に調査費用などを請求してもいいと思っています。
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