クラウドファンディングに挑む【第6回】
- 2018/9/12
- 特集記事
- クラウドファンディングに挑む
- bragoku編集部
製品化へ向けて最終段階へ
サンプル制作の段階で、アルテック・ラボの東京事務所に何度も通い、コーティング塗料の調整、ブランドタグやポケットの仕様など、より良い製品を作るために打合せを重ねてきた小寺さん。
その結果、納得のいく商品ができる手ごたえを感じていた。
「アルテック・ラボでレザー生地を多く扱っていることから、そのノウハウを活かしてレザーに刻印したブランドロゴとレザーのポケットを付けることにしました。当初の予定よりもこだわりの詰まったものが出来ました」
第1工程である奄美大島の金井工芸での泥染めが終わり、いよいよ第2工程のアパレル加工が行われることに。8月上旬、金井工芸で泥染めしたTシャツとサンプル品を持って、愛知県にあるアルテック・ラボ本社を訪れることにした。
本来なら金井工芸から仕上がってきた泥染めTシャツを工場に送り、サンプル通りに加工してもらうだけでよかったが、あえて今回、本社を訪ねることを決めたのは、
・実際に加工する工場を見せてもらうこと
・泥染めを活かした加工をしてもらうために担当者と最終確認すること
という二つの目的があった。
何より、支援してくれた人たちのためにも、最後まで責任を持って自分の目で製作工程を確認し、直接担当者と打ち合わせをしたいという小寺さんの強い意志の表れだった。
本社を訪れてまず行ったのが工場見学だった。櫻井和重社長に直々に案内してもらい、実際に加工に使う機械や職人さんの作業など、これから行われる工程について一つひとつ説明を受けながら見学していった。
「工場に入った瞬間に、熊の敷皮のような動物の形をしたレザーがたくさん置いてあって驚きました。実際に工場を見学させてもらって、染色の機械や染めたシャツを乾かす大きな洗濯機、またいろんな薬品などが置いてあり、とても立派な工場でしたので、良いものができると再認識しました」
ここでアパレル加工の工程を簡単に説明すると下記の通り。
1. 鉄粉や特殊なブレンドをしたコーティング剤などでウェザリング加工
2. ブランドタグとポケット用のレザーパーツを作る
3. 泥染めしたTシャツにパーツを縫い付ける
工場見学の後は、実際に作業をしてもらう担当者の方と最終打ち合わせを行った。サンプルの完成度が高かったので、基本的には忠実に再現してもらえれば問題はなかった。しかし、ウエザリングウェアの出来を左右する大事な最終工程で、加工自体がTシャツ全体に大きな影響を与えてしまうと、泥染めの良さも加工の良さも消えてしまう可能性があったため、泥染めTシャツを見せながら要望を伝えていった。
「金井工芸さんが綺麗に泥染めをしてくださったので、ここはある程度色を抑えてほしいとか、もともと染まっているところはそれを活かすようなコーティングをしてほしいとお願いしました。それに対して担当の方も一つひとつ丁寧に確認してくださり、私の要望に応えつつ、サンプル通り忠実に再現してくれようとしているのがすごく伝わってきました」
逆に、アルテック・ラボ側からは、レザー独特のポケットの縫い付け方について説明を受けるなど、とても有意義な打ち合わせになった。
今回のウェザリング加工は最初から最後まで一人の職人が行うため、完成までは約2週間を要する。ロットの半分を制作した時点で問題がないか一度確認はするが、基本的に職人の技術を信頼して納品を待つことになる。しかし、小寺さんに不安は全くないという。
「打合せの際に、色や縫い合わせの範囲、加工の仕方など一つひとつ丁寧に確認していただきましたし、設備が整った工場で素晴らしい職人さんが最初から最後まで手作業で行ってくださるので、仕上がりについては全く心配していません。それよりも、楽しみの方が大きいですね。あとは、製品が届くまでにパッケージを作って支援者への発送準備をするだけです。いろいろ大変なこともありましたが、今は0から1を生み出す喜びを少しずつ感じています」
2017年10月にスタートしたプロジェクトも、今回の工場見学、最終打ち合わせを経て、ついに製品完成まで2週間を切った。果たしてどんな製品が仕上がってくるのか━。
第7回(最終回)へ続く・・・