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【第3回】教えて!阿部博士 – プラセンタサプリメントの選び方 –

サプリメントの必要性を感じるタイミングは人それぞれだと思いますが、大きく括ると『美容または健康面で日常生活に違和感をおぼえ始めたけど、病院に行くほどではなくどのような市販薬を飲んだらよいかわからないとき』ではないでしょうか。例えば、なかなか疲れが抜けきらなくなってきたときや節々に重みを感じ始めたときなど。
かく言う私は、マルチビタミンとマルチミネラルを飲用しています。体感はありませんが、恐らく日常の食生活では不足していると思っているからです。
これは購入するきっかけの部分ですが、実際にサプリメントを選ぶ際には似たような製品が色々あり、迷いどころです。
実際、ドラッグストアでプラセンタサプリメントを目にした私の母から、

「こっちのプラセンタサプリ、胎盤換算で〇ミリグラム配合だって」
「こっちのは生プラセンタ配合って書いてあるよ」
「どれがいいの?」

と質問がありました。
というわけで、今回はサプリメントの中でも「プラセンタサプリメント」の選び方についてお話します。

プラセンタサプリメントでよく用いられる宣伝内容は
①  実配合量
②  胎盤換算値
③  製法
④  原料原産地
あたりです。

では何を基準に選べばよいのか?
結論を先に述べますと、
「プラセンタサプリメントはまず第一にタンパク質量が多いものを選べ」です。
その理由は原料の特性にあります。
サプリメントに配合されるプラセンタエキスは動物(主にブタまたはウマ)の胎盤を化学的に分解・精製・乾燥して得られる粉末です。胎盤は臓器ですので、多くのコラーゲンと若干のエラスチン(いずれもタンパク質)で構成され、その他種々の活性因子(ペプチド)や糖・脂質・ミネラルが含まれています。

プラセンタエキスの効果には肝機能の改善や疲労回復、更年期症状の緩和など、主に内科・婦人科領域でエビデンスが取られていますが、プラセンタエキスに含まれるどんな成分が体内のどこに作用するかといったメカニズムについてはまだまだ分かっていません。
ただし、低分子のペプチド類が作用しているのではないかという予測はついています。仮に有効成分が糖質や脂質であれば、プラセンタエキスではなくても効果が得られなければ辻褄があいません。また、ミネラルだけが関与しているとすれば海洋深層水でも充分なはずです。
ということで、プラセンタエキス固有の成分はペプチド(一部タンパク質またはアミノ酸)になります。タンパク質・ペプチド・アミノ酸は栄養成分表示上すべてタンパク質量として算出されています。

これらの背景から、宣伝内容に用いられている①~④について、判断材料とするにはどういった点で不足があるのかを見ていきましょう。

①実配合量

確かに配合量が多いほどタンパク質量は多くなります。しかし、原料の精製が不充分だと、糖や脂質が残る場合があります。高純度のプラセンタエキスを配合している製品ほど、タンパク質量が増え、脂質量が減る傾向にあります。(※ドリンク状のサプリメントの場合、ブドウ糖を配合しているため糖質量とプラセンタエキスの純度がリンクしない可能性があります)
よって単に「実配合量」だけを判断材料にするには、純度に関する吟味が不足しています。

②胎盤換算値

原料として使っている胎盤の量が大きいほど有効成分がたくさん濃縮されているようなイメージを抱きがちですが、これは誤りです。プラセンタに限らず物質の重量は、濃縮や圧縮しても揮発(蒸発)しない限り変化しません。つまり出発原料として胎盤1トンを使っても1キログラムしか使わなくても、最終的に用いられる質量が100ミリグラムであれば100ミリグラム分の作用しかありません。そしてその中の有効成分量はタンパク質量で表示されています。
よって、胎盤換算値をプラセンタ配合量と捉えるのは誤りであり、判断材料にするには不適切と言えるでしょう。

③製法

プラセンタエキスには発酵処理した原料や、冷却乾燥したもの、酸分解、酵素分解と様々な原料が存在しています。しかし、タンパク質量として表示される重量は製法に左右されません。製法ごとにそれぞれメリット・デメリットこそありますが、有効成分が特定されていない現状ではどの製法が一番効果的に有効成分を摂取できるか見極められません。現状では色々なサプリメントを試した結果、どの製法の原料が自分に一番合っているかを吟味した方が良いと考えられます。
よって、選択基準の一つと出来るが、優先度は低いと考えることができます。

④原料原産地

飼育された環境や飼料により、原料となる胎盤のサイズや栄養価が異なる可能性は充分考えられます。また、ウマとブタとではアミノ酸組成が異なることが知られています。
プラセンタ原料には「ウマの方が良い」「ブタの方がエビデンスが多い」「日本産の方が規格基準がしっかりしている」など、事実に基づいた様々なイメージがありますが、いずれの原料にしても体感を得るためにはある程度の量を摂取する必要があります。そして摂取量の判断基準はタンパク質量になる訳です。
そのため、原料原産地についても選択基準の一つとして採用出来るが、優先度は低いといえます。

以上、①~④について私なりの見解でした。
③と④に関しては同程度のタンパク質量を有する製品が複数あるなら、選択条件に加えてもいいと思います。しかしまずは、タンパク質量を基準に探すことをおすすめします。
更に、もう一点だけ選ぶポイントを上げるとすれば剤型です。サプリメントは薬と違い毎日継続して摂取するもの。自分が続けやすいものでなければ途中で辞めてしまいます。プラセンタは動物原料のため、特異的なニオイがあるうえに直接口に入れると強い苦みがあります。
ドリンクやゼリータイプの製品は巧く味付けされているので飲みやすい反面、飽きやすい場合があります。その点、カプセルや糖衣錠は無味無臭ですが、代わりに水またはぬるま湯と一緒に飲むため忘れがちになります。この剤型が良いというものは無く、どの剤型が自分にとって継続しやすいかを考えながら選ぶと良いでしょう。

ちなみに私は、打錠やカプセルはいつまでも口の中に残ってしまうため苦手です。上手な飲み方のアドバイスを大募集中です。

阿部哲朗

阿部哲朗

投稿者プロフィール

・医療美容研究所 所長 / 博士(創薬科学)
・1979年6月26日生まれ、北海道出身。
・鹿児島大学理学部生命化学科卒業。
・北海道大学大学院生命科学院生命医薬科学コース修士課程修了。
・2018年3月、金沢大学大学院医薬保健学総合研究科創薬科学専攻博士後期課程修了。
 研究テーマは「植物に由来する健康機能性成分の探索」。
・趣味:将棋(四段)、スポーツ観戦 etc
・好きな言葉:①僕の前に道はない(道程より)
       ②人生=修行ナリ(S.O.W. センスオブワンダーより)

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