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インタビュー「アイスクリームにかけるお酒 / 合資会社白木恒助商店」

キャッチなコンセプトとネーミングで
ヒット商品に!

江戸時代末期、1835年(天保6年)から続く日本酒の蔵元「合資会社白木恒助商店」。従来あった日本酒の常識を打ち破った「アイスクリームにかけるお酒」が、ヒット商品として人気を博しています。その着想は、どこから浮かんだものなのか。商品開発の背景について代表社員の白木滋里さんにお話を伺いました。

若い人にも興味を引く「アイスクリーム専用」の日本酒

合資会社白木恒助商店 代表社員 白木滋里さん

━━アイスクリームに日本酒をかけるという発想は、どこから生まれたのでしょうか?

白木 日本酒業界は全体的に売り上げが低迷しており、ピークだった昭和50年代に比べて、今の売上は4割ほどです。私自身、この酒蔵で生まれて「なんとかしなくては」と思ってきました。そんなとき、友人から「日本酒をカキ氷にかけたら美味しかった」という話を聞いて、私が子供の頃、家族がアイスクリームに古酒をかけて食べていたことを思い出しました。「これもありなのでは」と思っていたときに、ある勉強会で“カレー専用水”というペットボトルが売っていたんです。そのとき、“専用”という打ち出し方が良いのではと思ったんです。アイスクリームなら若い人にも親しみやすいので、「アイスクリーム専用の商品はどうか」と考えたんです。
ただ、「日本酒をアイスクリームにかけると美味しいですよ」と言っただけでは、「やってみようかな」という程度の反応で終わってしまいます。「アイスクリームにかけるお酒」という商品を作ってお店に置けば、日本酒に興味のなかった人でも「やってみよう」という気持ちになるのではと考えました。

━━「日本酒をアイスクリームにかける」というコンセプトについて、周囲の反応はどうでしたか?

白木 驚きの声が多かったですね。ただ、今考えるとそういう商品ほど意外性があって売れるんですよね。誰もがすんなり納得するようなものは、最初は売れても継続的には売れないんだと思います。最初は「アイスクリームにかけるお酒」という商品名から好奇心で買ってくださった方が、リピーターになってくれることも多いんです。また、男女ともプレゼント用に購入される方が多いですね。

試行錯誤を繰り返し、たどり着いた「アイスクリームに合う古酒」

数々の名酒を世に送り出してきた酒蔵

━━「アイスクリームにかけるお酒」は、どのようにして商品化されたのですか?

白木 昭和46年から樽に保存した古酒が113種類ほどあります。その中から、アイスクリームに一番合うものを探し出しました。毎日アイスクリームにかけて食べながら、「これは合わない」「これは美味しい」という作業を1カ月くらい続けました。
 最初は、甘いお酒と甘いアイスクリームの組み合わせは合わないだろうと考えていたので、苦いお酒で試していました。ところが甘いお酒の方がラクトアイス系のアイスを美味しくすることが分かったんです。そこから、一番合う古酒を厳選しました。

年代や価格だけでなく、味わいにも違いのある2つのタイプ

アイスクリームにかけるお酒「ライトタイプ」(左)と「ヘビータイプ」(右)

━━ライトタイプとヘビータイプの2種類がありますが、それぞれどのような特長があるんですか?

白木 ヘビータイプは、昭和47年と52年の2種類をブレンドしていて、バルサミコ酢のように濃縮されています。酸っぱいわけではないのですが、とても芳醇で日本酒とは思えないような味わいです。これに対してライトタイプは、平成10年の貴醸酒という甘口のお酒。ヘビータイプに比べて、どなたでも飲みやすいと思います。

━━古酒というと値段が高いというイメージがありますが、価格はどのように決められたのですか?

白木 値段は迷いましたね。ライトタイプは1,200円(税別)で販売していますが、当時は8年ものだったので、そう考えると結構高いかなと。最初は800円くらいにしようかとも悩んだのですが、結局1,200円にしました。
 また、ヘビータイプは、お酒自体が貴重で、限定品で販売ということもあり5,000円(税別)にしました。発売当時はどちらも少し高いかなと思いましたが、今ではライトタイプは20年ものになっていますし、昭和52年の古酒は200㎖で17,000円で販売しているので、どちらも安いと思いますよ。

ホームページ刷新やSNSの活用で広がった販売数

━━商品を販売するうえで、PRやプロモーションなどは行われたのでしょうか?

白木 プレスリリースは打ちました。あとは岐阜県が認定する「美濃飛騨すぐれもの」に選ばれて、1年間いろんなところでPRしました。新聞にも数紙載せてもらい、それを見てテレビやラジオの取材も受けましたね。でも当初の取り組みはそれだけ。12年前はブログやメルマガ、ホームページはありましたが、今のようにInstagramやTwitterなどのSNSは普及していませんでした。ホームページも私が作ったものだったんですよ。でも、知人から「商品力があるんだから、専門の人にホームページを作ってもらった方が良い」とアドバイスを受けて作り直したところ、売り上げが伸びました。
また、最近はSNSの効果も大きいですね。Instagramなどに写真を挙げてくださり、そこから広がっている部分は多い気がします。「#達磨正宗」で検索すると、結構な数の投稿が出てくるんですよ。

━━今はSNSを活用されていますよね。

白木 はい。Facebookは5~6年前、Instagramは2年前から始めました。「#達磨正宗」を付けて投稿してくださっている方には、 “いいね!”してお礼のコメントをするようにしています。コメントが付くことで喜んでくださり、次に繋がっていけば良いと考えているので、努力は惜しみません。

━━商品は全国の店舗でも販売されているんですか?

白木 都内と関西の酒屋さんで販売しています。展示会や催事などにももっと出展したいとは思っているのですが、日本酒の販売は書類提出など手続が厳しいんです。ただ、いろんな販売チャネルを持っておくことは大切なので、今後は出店も検討しています。

「面白そう」という気持ちから、次々に生まれる商品アイデア

店内では、様々な商品が販売されています

━━「アイスクリームにかけるお酒」以外にもPB商品を出されていますが、アイデアはどこから生まれてくるんですか?

白木 これまで、子供が生まれた年に仕込んで20歳になったときにお祝いで飲む「未来へ」や、厄年を前向きに飛躍するという意味で作った厄払神酒「躍年」など、いろいろな商品を作ってきました。商品企画のコツはありませんが、常に商売のことを考えているので、何を見ても「こういう商品は面白いかも」なんて考えています。ですから、「これは面白そう」「これは良いな」と感じると、すぐにやってみたくなるんですよ。

━━いろいろアイデアを出して商品化しても、なかなかヒット商品にはならないですよね。

白木 そうですね。厄払神酒「躍年」は「絶対に売れない」と言われましたが、私は絶対に売れると思っています。大切なのは「諦めない」こと。やってみてダメでも、なんとかして売ろうとする努力が大切です。商品を生かすも殺すも、結局自分次第なんですよ。

━━最後に、今後のビジネス展開について教えてください。

白木 元号が変わるので、平成の30年分のお酒全てと昭和の2種類、新しい元号の春に仕込むお酒を33本セットにした『ビンテージコレクション』の販売を考えています。また、今後は岐阜の企業とコラボして地元の商品をアピールしたり、海外販売により力を入れていきたいと思っています。

合資会社白木恒助商店
代表社員
白木 滋里(しらき しげり)さん

合資会社白木恒助商店
〒501-2528
岐阜県岐阜市門屋門61
TEL.058-229-1008
URL:https://www.daruma-masamune.co.jp/

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