では、何故中国の人たちは、インフルエンサーを支持するのでしょうか。
その背景には、中国ならではの文化的な要因があります。中国には圏子(チェンツ)という文化があります。圏子の説明はやや難しいのですが、自身と同程度の経済基盤、ライフスタイル、あるいは同じ趣味などを持つ人々で構成されたコミュニティで、強い絆を持った仲間であり、同じ圏子に属するメンバーは、いわゆる「身内」同士のような感覚を持ちます。圏子の結束力や団結力は私たち日本人の想像を超えており、横並び意識も強いものです。
つまり誰かが圏子のなかでランクアップしたならば、それになぞらえて他のメンバーも同じようにランクアップしようとします。また、そのための相互扶助も行います。
圏子内では常に情報が共有され、仲間の情報は国の情報よりも信用されます。例えば圏子の誰かが、ある洋服を購入し、高い評価を仲間に伝えたとします。圏子メンバーはその評価を疑うことはありません。それが口コミなどで拡散し、別な圏子で共有され、さらに拡散することになります。
このように、中国では「人」ベースで、信用できる情報の収集を行ってきたのです。そしてこの「圏子」の存在が、現在の中国流インフルエンサーのベースとなっています。ファンにとってインフルエンサーの存在は、自身が「信頼できる個人」であり、そのインフルエンサーが紹介するアイテムは良いものだと信頼できる―という訳です。